2022-12-14 政治・国際

悪名高い傭兵部隊ワグネルが壊滅的被害 ウクライナ軍が東部ルハンシクの拠点破壊

© Reuters /達志影像 Yevgeny Prigozhin

注目ポイント

ウクライナ東部のルハンシク州を占領するロシア軍の傭兵部隊の拠点が、ウクライナ軍の攻撃により壊滅的被害を受け、多数の兵士が死亡したと同州のハイダイ知事が今週明らかにした。傭兵部隊が所属するのは、悪名高いロシアの民間軍事企業ワグネル・グループ。〝プーチンの料理人〟と呼ばれるエフゲニー・プリゴジン氏が創設した組織で、同州の前線に〝捨て駒〟のように数千人の兵士を送っているという。

英BBCによると、攻撃を受けたのはルハンシク州中心部カディフカにあるホテル。ワグネル・グループが本部を置き、多くの傭兵が宿舎としている施設だ。ロシアのSNSテレグラムには、瓦礫(がれき)と化したホテルの建物の画像が多く投稿されている。

ルハンシク州のほぼ全域がロシアの占領下にあるため避難しているハイダイ知事は、「ワグネルの本部がある場所で爆発があった。そこにいた大勢が死んだ」と語った。知事は死者数について明言を避けたが、爆発で重傷を負った兵士の「少なくとも50%」は医療設備の不足により助からないだろうと述べた。

ロシア国防省はこの件に関してコメントしていないが、同国の国営タス通信は地元当局者の話として、「スタハノフ市(ロシアでのカディフカの名称)のホテルがウクライナ軍によるHIMARSミサイル攻撃で破壊され、救出活動が続いている」と伝えた。

ワグネル・グループの創設者プリゴジン氏はレストラン業で富を得たオリガルヒ(新興財閥)で、プーチン大統領に近い人物。プーチン氏の意向に沿って、プリゴジン氏はワグネルの傭兵を内戦が絶えないシリアやリビア、マリ、中央アフリカ共和国などに送っているが、現地での拷問や殺人などの戦争犯罪や人権侵害で西側諸国から批判の対象になっている。

また、ワグネルがルハンシク州に派遣している傭兵の多くはロシア国内の元受刑者で、恩赦を条件にワグネルの兵士として雇い入れ、数千人を前線に送っているという。そんな傭兵について、複数のウクライナ軍関係者はAFP通信に、「こうした元受刑者が〝捨て駒〟のような使われ方をしている」と語った。

ウクライナ軍第93旅団所属のアントンさん(50)はAFP通信に、「暗くなる午後6時前後から、経験のない兵士たちがわれわれの陣地に向けて前進を命じられ、ある地点で数分間とどまる」と説明する。こうした兵士が毎晩7、8人、ウクライナ部隊に向かってやって来るという。

また、第53旅団のセルヒー少佐は、「一行の任務は、前進してわれわれが発砲せざるを得ない状況を生み出し、陣地の場所を探り当てることだ」とし、その後、「ロシア側はこちらに向けて大砲を撃ち込み、より経験豊富な精鋭部隊を送り込んでくる」と、ワグネルの戦術を説明した。

一方、ウクライナの前線で死亡したザンビア人の留学生だったレメカニ・ニレンダさん(23)の遺体が母国の首都ルサカの空港に到着した。中東のニュース専門局アルジャジーラによると、ニレンダさんはロシアで核工学を研究していた2022年4月に麻薬事件に関与したとして有罪判決を受け、服役していた。

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