2022-12-13 政治・国際

「ゼロコロナ」政策から急転換で感染者急増 従業員不足で中国の経済活動が急激に低下

© AP / 達志影像 Beijing

注目ポイント

中国各地に広がった抗議デモにより、習近平政権は先週、新型コロナウイルスに対する厳格な「ゼロコロナ」政策で義務付けられていたPCR検査やロックダウンを含む規制のほとんどを解除した。すると、とたんに各都市で新規感染者が激増し、経済活動が急激に低下している。

「ゼロコロナ」政策からの転換について、習近平国家主席は今月上旬、欧州連合(EU)のミシェル大統領と北京で会談した際、現在中国でまん延している新型コロナウイルスは、致死率が比較的低いオミクロン株だとの認識を示した。

これは中国指導部がコロナ対策を緩和するための伏線とみられている。国際コンサルティング会社テネオ・ホールディングスのガブリエル・ウィルダウ業務執行取締役は米ブルームバーグに、「中国が『ゼロコロナ』政策からの出口戦略の下準備を進めつつあることを示す新たなサインのように見える。習主席ら党指導部にとって、コロナ政策のいかなるシフトも公衆衛生上の判断であり、抗議デモからくる政治面での圧力に基づくものではないと国内外に伝えることは重要だ」と指摘した。

実際に中国では新規感染が急拡大し、企業などでは多くの従業員が感染、自宅待機になったため休業を迫られ、中には感染力の強いオミクロン株を恐れて出勤しない従業員も増えているとロイター通信は報じた。

中国の著名な疫学者である鍾南山氏は国営メディアに対し、蔓延しているオミクロン株は1人の感染者が18人もの人に感染させる可能性があるとし、「複数の主要都市では数万~数十万人が感染していることでもわかる」と語った。

ただ、北京の住民に対する定期的なCOVID検査は先週廃止され、医療従事者のみが対象になったため、公式な新規感染者数は表向き急減している。保健当局の発表によると、10日に北京で1661人の新規感染が報告されたが、緩和される前日の6日の3974人から42%減少した。

しかし、2200万人近い人口を抱えるこの北京では、明らかにコロナ感染したと思われる事例に事欠かないという。

同市の観光・イベント企業に勤務するある女性は、ロイター通信に、「私の会社では今、コロナ感染していない人はほぼゼロです」と告白。だが、「これは避けられないことだと認識しています。でないと、誰もが自宅で仕事をしなければなりませんから」と語った。

10日の日曜日は北京の商業地区、特にブティックやカフェが立ち並ぶ歴史的な什刹海地区のような場所は通常観光客でにぎわっている。だが、同日、外出した人はほとんどおらず、北京で最も人口の多い地区である朝陽のショッピングモールでは、多くのサロンやレストラン、小規模売店が閉鎖され、ほとんど人影がなかったという。

経済専門家は、中国経済の健全化への道のりは一様ではないと広く予想している。従業員の病欠による労働力のひっ迫などの衝撃が、本格的な回復をまだしばらく遅らせているからだ。

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