2022-12-10 観光

台湾らしい市場―― 大稲埕の迪化街と台北花卉市場

注目ポイント

一つの都市を理解する際、市場は手掛かりに満ちた場であり、店はその案内人である。今月号の『光華』では、台北大稲埕の迪化街と、台北花市をご案内する。

だが、旧正月が近づくと様子は変わる。「年末の3ケ月前から忙しくなります。商品の仕入れが始まるのです」普段、迪化街の商店は商品を店頭の通路に並べているが、年末の買い出しの時期になると、大量の乾物類が積み上げられる。

欧米からの観光客は、カラスミなどの乾物に馴染みがないのではないかと思われるが、李日勝によると、食品を保存するために乾燥させるという方法は世界各地にあり、彼らにとってはカラスミも馴染みのない食品ではないという。フランスやイタリアにもカラスミを使った料理がある。ただ、乾燥したカラスミを粉状にして調味料として用いるという点が異なるだけだ。李日勝は天然の台湾で手作りされたカラスミを主に扱い、台湾の風土が生み出した唯一無二の風味を強調する。

各地の物産は、大晦日の夕食には欠かせないが、料理をしない若い世代にはなじみがない。そこで李日勝は消費者にわかりやすく料理の方法も教える。「最近は多くの家庭では、大晦日の夕食もレンジの『チン』という音が聞こえてから、皆が食卓に就くのでしょう」と李日勝は笑う。しかし、以前はそうではなかった。昔は、正午過ぎから家族が集まり始め、大勢でおしゃべりしながら夕食の準備をしていた。そんな暖かい風景も、李日勝が言うところの「伝統」なのである。 

黄秀美(左)と廖庭妍(右)の親子は、漢方薬を現代の日常生活に取り戻そうと努力している。


台北花卉市場

黄長生薬行では、ホットワイン用のスパイスセットや薬膳セット、入浴剤、足浴剤など、現代の暮らしに密着した商品を開発している。

台湾の四季を知る

深夜、高速道路を中南部から北部に向かうトラックの中には、午前4時から競りが始まる台北内湖の花卉市場へ急ぐものも少なくない。

午前4時に生花の競りが始まり、売れた花々は市場内の各店舗に並べられる。5~6時には生花店やフラワーデザイナー、フラワーアレンジメント教室などが次々と仕入れに来る。少し遅れて一般消費者が家に飾る花を選びに訪れ、正午には店舗は店じまいする。

財団法人台湾区花卉発展協会の李麗蘋‧総経理は私たちを案内しながらこう説明してくれた。「台北花市は全台湾で最大規模の花卉卸売‧小売市場です。切り花、鉢植え、資材の3つのエリアがあり、200余りの店舗があります。全体の8割は国産、2割は輸入品を扱っています」花は全国各地から集まってくるが、主な産地は台中、彰化、南投、雲林、嘉義、台南だ。秋から冬にかけてが台湾の花のシーズンである。夏は暑くて生花栽培には向かず、オランダやエクアドル、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドなどからの輸入花材で不足を補っている。

生花業界で30余年の経験を積んできた黄麗蘋はこう話す。「台湾で最も多く生花を消費するのは宮廟の祭祀で、全体の3割を占めます。また台湾人は旧暦の毎月1日と15日に礼拝し、商店では毎月2日に商売繁盛を祈願して花を捧げます。続いて冠婚葬祭や開業、転居などのお祝いもあります。近年はフラワーアレンジメント教室の消費が3割を占めるようになりました」

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