2022-12-09 政治・国際

ロシア国内の空軍施設相次いで攻撃受ける プーチン氏「核戦争のリスクが高まっている」

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

ロシア国内の複数の空軍基地などが今週、ウクライナのドローンにより相次いで爆撃されたことで、プーチン大統領の焦りが一段と鮮明になった。同大統領は「核戦争のリスクが高まっている」とし、他国から攻撃を受ければ報復すると言明。ただし、核兵器は「抑止力のため」だと強調した。一方、厳しい冬を迎えるウクライナのエネルギー施設などを狙ったロシアによるインフラ攻撃が激化しそうだ。

ロシア国防省は5日、同国中部と南部の空軍基地でウクライナ側が無人機を使い、駐機中の爆撃機を攻撃したと発表。翌日には、ウクライナと国境を接するロシア西部の飛行場に近い石油施設がドローンによる攻撃を受けたと、地元の州知事がSNSで明らかにした。

これらの攻撃についてプーチン政権は、ウクライナとの国境から遠く離れた基地が攻撃された事態を深刻に受け止めているもようだ。これによって近くウクライナに対し、大規模な報復攻撃があるのでは、と懸念されている。

ウクライナ側はドローン攻撃を正式には表明していないが、英紙フィナンシャル・タイムズは7日、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問が、「ロシアに安全地帯はなくなるだろう」と警告し、ロシアからインフラ施設への攻撃を繰り返し受ける中、遠隔攻撃による報復を強化する可能性を示唆したと報じた。

ポドリャク氏は「攻撃は繰り返し行える。距離に制限はなく、近くシベリアを含むあらゆるロシア内部の標的を攻撃できるようになる」と強調した。

時事通信によると、ロシアの軍事施設を狙ったドローンは、ソ連時代に開発された無人偵察機の改良型が使用されたという見方が出ている。防空網を突破し、内陸の奥深くまで500キロ以上も飛行しており、ウクライナ軍が運用中のトルコ製の攻撃ドローン「バイラクタルTB2」(航続距離150キロ)では不可能なためだ。

ロシア国防省はドローンを迎撃したと主張しているが、死者が出たことは認めており、核兵器搭載可能な爆撃機の拠点2か所が狙われたことを深刻に受け止めているという。

ドローンはTU141無人偵察機が転用されたとみられる。時事通信によると、TU141はソ連時代、ウクライナ北東部ハリコフの工場で生産され、1979年から運用。もともと航続距離400キロだったが、2014年のロシアによる軍事介入後、改良・再投入が決まり、同1000キロまで延びたとされる。

ウクライナの国営防衛企業ウクロボロンプロムは10月、航続距離1000キロの攻撃ドローンの開発が最終段階にあると明らかにした上で、「年末までにウクライナ人も敵(ロシア)も驚かせる」と宣言していたと時事通信は伝えた。理論上はモスクワに優に届くことになるが、首都の防空網は厳重な可能性があるという。

そんな中、ロシアの人権理事会の会合に7日、リモート出席したプーチン大統領は核兵器使用について触れ、自国が攻撃された時のみ大量破壊兵器を使用すると強調した。「核戦争の脅威は確かに高まっている」と述べ、米国の核兵器が欧州に大量に配備されていると批判しながら、ウクライナへの軍事支援を続ける欧米をけん制した。

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