注目ポイント
10月に日台ほぼ同時に水際対策緩和が発表された。待ってましたとばかり、台湾から多くの観光客が日本各地に飛んだが、日本から台湾に来る観光客はコロナ禍の真っ最中とさほど変わらない。「悪い円安」が最大の原因なのは間違いないが、新たな魅力の発信が足りないのではなかろうか。
観光客の数の差およそ4倍
台湾交通部観光局(運輸省に相当)の統計によると、10月のアウトバウンドは17万2319人で、そのうち約21%に当たる3万6880人の台湾人が日本を訪れている。一方インバウンドを見ると台湾を訪問した外国人は9万3206人で、そのうち日本人は9625人となっており、全インバウンドに占める日本人の割合は約10%に過ぎない。10月の1か月、日台を訪問した観光客は、日本人9625人に対して台湾人36880人でその差は3.8倍である。コロナ前の2019年は訪台日本人が約217万人、訪日台湾人が約489万人で差は2.2倍であった。差が広がった原因はやはり何といってもコロナに対する不安と円安であろう。
増えない日本人
今年の夏あたりからじわじわと始まった円安は9月2日に1ドル140円を突破、コロナの水際対策が緩和された直後の10月21日にはついに150円台まで下落した。この円安は台湾の観光業者にとって大きなダメージとなった。何しろタイミングが悪い。コロナ禍による国内外の観光客が減少したために、台湾の観光業者はお土産や観覧チケット、宿泊代などいろいろな値段を下げ、耐え忍んでそれに対抗してきた。10月になってやっと観光客が増えると思ったとたん、最悪の円安である。しかも中国人・香港人観光客は中国政府の「ゼロコロナ政策」によって元から全く期待できない。
その後日銀の介入で為替レートは11月下旬ごろに139円台まで持ち直した。そしてクリスマスシーズン、緩和後初めての年末年始、日本人観光客の訪台に期待が膨らむシーズンの到来である。しかし訪台日本人が増える兆しはまだ見えない。
古い台湾と新しい台湾
日本政府は国内の観光産業を回復させるため、及び海外から新たにコロナウイルスを持ち込ませないため、国民に国内旅行を推薦している。また、台湾の観光業界はこの2年、価格を下げて販売し続け、新しい観光商品の宣伝を浸透させてこなかった。これも日本人観光客が増えない原因の一つかもしれない。日本人の行きたい海外旅行先ランキングでは台湾は韓国に次いで2位(3位グアム、4位ハワイ、5位バンコク)となっていて相変わらず人気は高い。台北101、故宮博物院、九份、士林夜市、龍山寺、鼎泰豊、足裏マッサージなどはもちろん今でも魅力ある観光の目玉だが、清境農場、高美湿地、太平山など日本人が知らない穴場もあるし、ダブルデッカー台北レストランバス、リージェントホテルとコラボした豪華な食事ができる観光列車鳴日号や窓が開けられるレトロ列車藍皮解憂号や、13年間も不通だった南横公路など新しいものもたくさんある。今はまだ宿泊費やお土産代などが安く、隣国の観光客は戻っていない。今のうちに「密」ではない台湾の観光地や今まで行ったことがないところをゆったりと回るのも乙なものである。

© Shutterstock / 達志影像

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