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水上に生息し、アヒルのように水に飛び込み、潜ってサカナなど獲物を採る――これまで知られていなかった、そんな生態を持つ恐竜が存在したことが、新たな研究で明らかになった。
韓国・ソウル大学、カナダ・アルバータ大学、モンゴル・モンゴル科学アカデミーの研究者らは、2008年にモンゴル南部で発見された新種の恐竜の骨を研究し、まとめた論文を先週、英科学誌「ネイチャー」のグループサイト「コミュニケーションズ・バイオロジー」で発表した。恐竜は、「多くの歯を持つ泳ぐ狩人」という意味で「ナトヴェナトル・ポリュドーロス」と命名された。
ナトヴェナトル・ポリュドーロスは、1億4500万~6600万年前の白亜紀後期にモンゴルに生息していた獣脚類で、特徴的な長い首と尾や、足には3本の指と爪があり、カイツブリやペンギンなど水中に潜る鳥のような流線型の肋骨を持っていた。ただ、飛ぶことはできなかったという。発見された一部の骨は7100万年前のもので、完全に近い形で見つかり、体長は30センチほど。小型の恐竜と考えられる。
獣脚類の恐竜とは、二足歩行し、陸生肉食動物史上最大級だったティラノサウルスのような大型肉食恐竜から、ヴェロキラプトルのような小型肉食恐竜を含む多様なグループを指す。
論文は、「その体形からナトヴェナトル・ポリュドーロスは泳ぎが上手な捕食者だったことは明らかで、流線型の体が獣脚類の恐竜の中で、別の系統で独自進化したことを示している」と結論付けた。
ナトヴェナトル・ポリュドーロスの標本は、モンゴルで発見された別の恐竜ハルシュカラプトルに酷似し、研究者らは半水生である可能性が高いと考えている。だが、標本はハルシュカラプトルのものよりも完全で、流線型体形をより容易に見て取ることができるという。また、ナトヴェナトル・ポリュドーロスとハルシュカラプトルは、どちらも前腕を使って水の中を推進していたことが推測されるという。
今回の論文を査読したロンドンの古生物学者クイーン・メアリー大学のデイビッド・ホーン教授は、米CNNに「ナトヴェナトル・ポリュドーロスが陸生か水生かを正確に線引きするのは難しい」と指摘した。だが、標本からは、「その腕が水を掻くのに非常に適しているように見られる」とし、水中に潜る動物には不可欠な骨密度の高さを持っていたと述べた。
また、論文で記されたように、ナトヴェナトル・ポリュドーロスは「比較的流体力学に沿った体」だったという。
ホーン教授によると、次のステップは恐竜の体形をモデリングし、どのように動いたのかを正確に理解できるようにすることだと説明。「それは足でパドリングしているのか、イヌ掻きのようなものだったのか、また、どれくらい速く泳げたのか」を知ることができるというのだ。