注目ポイント
台湾の花屋は日本と比べて年中同じ花が並んでいて、季節の変化を感じることが少ない。その背景には自己主張がはっきりしている文化、そして「今一番綺麗な状態」の花々を求める嗜好の違いがある。
日本の花屋では、季節ごとに多くの切花や鉢物が並び、花を買わずとも店の前を通るだけで季節を感じることができる。台湾の花屋の場合も多少のイベント感はあるものの、基本的には年中同じ花が並んでおり、日本ほど季節を感じることは少ないのではないだろうか。この違いについては、文化や売れ筋商品が違うため、それぞれの文化に合った陳列がなされている為であると考えられる。今回は台湾人の花の選び方についてご紹介していく。
好き嫌いがはっきりしている
台湾の花屋で季節をあまり感じられない理由の一つとしては、台湾人は好きな花というものがはっきりしていることにある。日本人の場合、誰かに花をプレゼントするときは無意識に季節感を意識している。例えば、真冬に向日葵を贈りたいと思う日本人はそうそう多くないはずである。日本人は古来より四季を大切にしてきた風習があり、今でもその風習は日本人の精神に刻まれているからではないだろうか。
一方、台湾人は自分の好きな花または相手が好きな花を選ぶ風習がある。これに季節はあまり関係ない。真冬に向日葵を贈りたいお客様がいたり、秋にチューリップを贈りたいお客様もいる。また、嫌いな花というものもはっきりしており、カスミソウが嫌いな人やカーネーションが嫌いなお客様は最初にキッパリと入れないで欲しいとご要望される。
こういった自己主張がはっきりとした文化は、花だけに限らず日常生活でも多く見られる。台湾で車を運転していると分かるのだが、割り込み車両が多かったりお礼もなかったり、日本とは交通マナーも大きく異なる。逆に自分もそういった運転をしなければ、台湾で運転するのは難しいだろう。他にも、義理の両親に対しても自分の考えをしっかりと伝えたり、会議では平社員でも物怖じせずちゃんと自分の意見を発言する。空気を読んで相手に合わせたり、その場の空気で自分の主張を表現しない日本人とは大きく異なる。
満開が好きか、蕾が好きか
花の開花具合でも台湾人と日本人では異なる部分がある。日本人は、「花の品質」が良いというのは、新鮮で蕾が多く長く楽しめる花のことを指す場合が多い。だが、台湾人にとっての「花の品質」というのは、今一番綺麗な状態であることである。
以前、花屋を開業したばかりの頃にいただいたクレームで、「花が咲いていない」というものがあった。その方は百合の花束をご注文されたのだが、その時の店内の百合は3分咲き程度であった。1本の百合に5輪の蕾があったのだが、どれも2輪は翌日には満開予定、3輪はまだ蕾という状態であった。お客様にお花をお届けし、数時間後にご連絡をいただいた。内容は「花が少ない。今日花束を渡すのに、花が咲いていない」というものだった。こちらとしては、百合自体は、最高品質の百合のため花の数が少ないということはないということ、蕾が多いために少なく感じられるということ、そして咲いていないことに関しては全部満開なら、真夏だったこともあり5日程度で枯れてしまうことをお伝えした。お客様には納得していただいたものの、反省も含めて色々な台湾人の花関係者に今回のクレームの件について相談した。