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2022-12-12 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第9回:台湾地方選からの中国習近平さんゼロコロナへの「白紙革命」で大騒ぎの年末

注目ポイント

習近平政権とゼロコロナ政策に反対する街頭抗議や集会が中国国内外で広がりを見せています。盤石だったはずの体制の雲行きが、ここにきてなぜ怪しくなってきたのか——山本一郎さんの月イチ連載です。

地方選の国民党勝利は台湾人のバランス感覚ゆえ、と思っていたけれど……

何というか、歴史というのはこうも簡単に動いてしまうのかという事案が立て続けに起きていまして、気持ちを整理するのに超大変だというのが現状であります。

というのも、2月にロシアによるウクライナ侵略が勃発し、これに伴って資源価格も上昇し、世界的なサプライチェーンどうしようというモードになって面倒が起きていました。その背景にはアメリカと中国による新たな冷戦構造的なモチーフの中で、台湾を電撃訪問したアメリカ下院議長のナンシー・ペロシさんに関する緊張激化で、日本のEEZにも中国がミサイル打ち込むなどして日本では防衛予算の倍額でドン! という国会審議で与野党論戦となったのもありました。

そのタイミングで、ついに習近平さんが3期15年の禁じ手発動! 一方アメリカでは苦戦が予想されていた民主党が中間選挙で勝利! 議会上院で半数の議席を獲得することが確実となり、主導権を維持する見通しになり、習近平さん対ジョー・バイデンさんの対立構造はより強固なものになるのか、とみんな心配したわけですよ。

台湾では統一地方選挙が行われて、こちらは下馬評通り与党・民進党が敗北してしまい、蔡英文総統が同党主席を辞任することとなりました。言うなれば、独立派か融和派かは国政の問題であって、国民の身近な生活についての評価を下す地方選においては国民党に軍配が上がるのもある種の台湾人の皆さんのバランス感覚だとも思っております。

今回選挙が行われた首長選22件のうち、与党・民進党が獲得したポストは5つにとどまり、人口の約7割を占める6直轄市についてみると、民進党は台南市と高雄市の2市のみとなりました。対する最大野党・国民党は台北市、新北市、桃園市、台中市の4市のポストを獲得したほか、国民党は13ポストを獲得して、前回大敗した民進党はさらに1個ポストを減らすことになったわけであります。

先の中国共産党大会において、習近平さんがひとつの中国原則に則り、党活動報告で台湾問題について「台湾問題の解決は中国人自身が決める」と明言。これに付帯して、アメリカや日本を念頭において外部勢力の干渉と協調する台湾内の勢力に対しては武力行為の放棄を約束しないとまで宣言しているわけですから、この台湾地方選の結果をもってさまざまな策動をされるのではないかと台湾民主派が身構えるのもまた当然と言えます。

台湾地方選で国民党が勝利したことはただちに台湾と中国共産党との融和を意味するものではなく、そもそも台湾は民主的に国民の考え方として一票を投じた結果がこうであったという話にすぎません。民主主義的なアプローチを放棄してまで中国に帰属しようという論法に飛躍するのもまた困難と言えます。いろんな議論があるのが民主主義の良いところですから、中国が工作に力を入れたところでその帰結は投票によって決まるというプロセスになります。

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