2022-12-03 観光

遠路はるばるやってきた旅人に温かい食事を提供馬祖南竿島の“秘密の接待地”――西尾半島物産店

© 西尾半島物產店 提供

注目ポイント

ここは馬祖の地元民のプライベートスポットである。遠くから来た人たちに温かい食事を出し、1人でくつろげる空間を提供している。天気のいい夕方5時には、2階で「西尾の夕日」のマジックアワーを見ることも忘れずに。

西尾半島のカクテルはウェブ上でも紹介されているが、スタンダードメニューには載っていない。なぜなら、バーテンダーが平日は公務員という不規則な体制で店に立っているためだ。

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実際、馬祖ではほとんどの人が2つ、3つの職業を掛け持ちしている。それはこの地域の人口が少なく、常に人手不足であることが関係しており、彼らは毎日、「ミツバチのように忙しくお金を稼いでいる」と佩佩さんは言う。「例えば、ムール貝獲りを手伝ってくれる漁師さんは、午前中の仕事を終えたら午後には教習所の教官になり、同時に株を売買したり、時間が空けば福州で不動産を斡旋したりもする」。

馬祖の人達には「リラックス」という言葉はないようで、「休む」ことは「時間の無駄」だと考えているようだ。これだけ稼いでいるのに、なぜ休まないのか不思議に思っていたが、その後、現地の人と一緒に過ごすうちに、馬祖の先代達は貧困を恐れていて、それを補うためにこのような働き方をしていたのだろうと気づいた。

© 西尾半島物產店 提供

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平日の西尾半島は、食事やショートステイで訪れる地元の人が多く、プライベートな観光スポットとなっている。1~2時間、1人になってリラックスしたり、家族や友人とより親密な対話をするための空間を提供している。また、遠くから来た旅行者は、2階で靴を脱いで海の景色を眺めながら休憩することもできる。

店主の佩佩さんは、以前から地域の創生に関わる仕事をしていたため、馬祖と台湾を行き来することが多かったが、馬祖をより深く理解した後に、移住してお店を開きこの地をよりユニークな場所にしたいと思ったそうだ。西尾半島の存在によって、地元の人々は発展の可能性に目を向けはじめ、次の世代が馬祖に戻る理由を見出している。

「開店という言葉は馬祖の人達に『何しに来たのか?』と聞かれた時に一番理解してもらいやすい回答だ」。実際に馬祖に住まなければ、一時の旅行客だと思われてしまうが、現地の人々と長い時間を過ごすことで、物産品や地域の開発について話し合う時間が出来る。佩佩さんは「今後また、より多くの職人をここに呼び寄せ、地元の食材との融合や共創をしていきたいと考えています」と話す。

© 西尾半島物產店 提供

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馬祖のほぼ全域で海を見ることができ、天候が異なれば海の雰囲気も異なる。「馬祖の海は澎湖の海とは全く違います。 澎湖の海はとても青く、純粋で、人々が思い浮かべる海のイメージそのものだと思います」と言う佩佩さんによると、馬祖では地理的条件からか、海上に浮き具やロープ、漁船があり、その中には漁師たちの小さなムール貝船や対岸の砂取り船もあるそうだ。社会と人と風景が同時に存在する海であり、時には少し切ない気持ちになる。

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