注目ポイント
イギリスは世界の紅茶の中心的存在で、日本の緑茶は生産や文化面で世界のリーダー的地位にある。では台湾はと言えば、烏龍(ウーロン)茶が世界でその右に出る者はなく、誇れる存在だ。だが最近はそんな光景にも変化が見られる。台湾の茶職人の優れた製茶技術によって、台湾の風土を代表する烏龍茶の葉を用いた、全発酵茶である紅茶や、重発酵(50~70%)の東方美人茶、軽焙煎の清香烏龍などが生み出されているのだ。そしてそれらの茶がイギリスの紅茶コンテストや日本の緑茶コンテストでも受賞したというニュースが相次いで報道されるようになった。
お茶まつりでは、三笠宮家の彬子さまが杜蒼林のブースにわざわざお越しになり、東日本大震災に対する台湾の支援に感謝を述べられ、また梨山紅茶を試飲して「すばらしい」と言われた。それが読売新聞にも掲載されると、翌日には梨山紅茶を買いたいと問い合わせが相次いだ。
この2013年に杜蒼林は、3年後には静岡の世界緑茶コンテストに応募して必ず受賞すると自信をもって語った。その通りに2016年、華剛茶業は梨山清香烏龍と梨山紅茶で、二つの最高金賞(10位以内)を獲得した。

単一品種で単一茶園
この5年間で、台湾の嶢陽茶行、開蘭茶、遊山茶訪などの作る烏龍茶が、日本の世界緑茶コンテストで最高金賞を受賞している。
杜蒼林によれば、フランスのボルドーがワインを生むように、台湾の気候や地質が高山茶を生む。島国独特の気候や、プレートが衝突する若い地質層が含むミネラル、季節風による霧の発生などが、茶に独自の風味を与える。
中でも梨山茶生産地は年平均気温20度以下、湿度は70~80%に上り、しかも除草剤は使わない。そこで育つ青心烏龍に、異なる発酵程度を施すことで異なるフルーティな香りが生まれる。華剛茶業の梨山紅茶と清香烏龍はフランスのAVPA主催の国際コンテストで2018年から3年連続金賞を受賞、2021年にはベルギーのモンドセレクションでも金賞2、銀賞1の成績を収めた。
「茶葉は最も素直で飾りのない食品であり、味や香りから製造技術や天候、環境がわかります」と杜蒼林は言う。ウィスキーのシングルモルト、或いはコーヒーのシングルエステートのように、台湾の単一茶園の、青心烏龍という単一品種を用い、単一季節に高級茶を生む。そんな繊細で優雅な台湾テロワールを世界の人が楽しめるのだ。





転載元:台湾光華雑誌