2022-12-03 観光

台湾烏龍茶の華麗なる変身 風土が育む独特の味わい

注目ポイント

イギリスは世界の紅茶の中心的存在で、日本の緑茶は生産や文化面で世界のリーダー的地位にある。では台湾はと言えば、烏龍(ウーロン)茶が世界でその右に出る者はなく、誇れる存在だ。だが最近はそんな光景にも変化が見られる。台湾の茶職人の優れた製茶技術によって、台湾の風土を代表する烏龍茶の葉を用いた、全発酵茶である紅茶や、重発酵(50~70%)の東方美人茶、軽焙煎の清香烏龍などが生み出されているのだ。そしてそれらの茶がイギリスの紅茶コンテストや日本の緑茶コンテストでも受賞したというニュースが相次いで報道されるようになった。

彼の東方美人茶は、茶碗に注ぐと琥珀色で、飲むと最初はほのかなジャスミン、中ほどには柑橘系の香りがする。2021年は茶樹には致命的な乾燥気象の年だったが、彼は気候変動を製茶技術で克服した。世代の異なる9人の茶師にブラインドテストをしてもらい、湯の温度を5度下げ、抽出時間を2分長くすることで風味を調整できた。

「コロナのおかげ」もあった。主催者が1カ月の開催延期を発表した頃、ちょうど台湾で雨季が始まり、雨の恵みを受けた茶樹によって新たな東方美人茶を生み出せた。自称「生涯最高の作」で再び応募し、3つ星に輝いたのだ。

張家齊は2019年のイギリスでの決勝の際に、大英博物館前で台湾茶を宣伝した。現地の華人を招いて台湾茶を紹介し、台湾への旅行も呼びかけた。(張家斉提供)

5代目の栄光

ほかにも人材はいた。往年の味を再びという理想を掲げ、烏龍茶によって梨山高山紅茶を生産する「華剛茶業」もまた、あちこちの茶葉コンテストで受賞を重ねていた。


華剛茶業を継いで5代目に当たる杜蒼林は、幼い頃に祖父が入れてくれた凍頂烏龍の、豊かで余韻の残る味わいが忘れられなかった。

病の祖父の世話をするために2005年に故郷に戻り、製茶を手伝い始めた杜蒼林は、製茶の師匠から「生茶は撹拌しなければ香らない」とよく聞かされた。だが、なぜ撹拌するのか、撹拌の違いがどう影響するのかまでは誰も知らなかった。

杜蒼林は茶業改良場などで授業を受け、製茶の科学的理論を学んだ。今は自らも中興大学で教える彼は「製造過程でなぜ緑茶が清香烏龍や果香烏龍に変わるのか、さらに発酵させるとなぜ紅烏龍になるのか。それは工程中の温度や湿度によってポリフェノールや酵素の働きが変わり、それが作用して、フレッシュ、フローラル、フルーティなどの風味を生むのです」と説明する。

学んだ知識を製茶に応用して、昔の鉄観音や凍頂烏龍の製茶技術や味を再現させたかった。2009年の秋茶から試作を開始、標高2000メートルに育つ青心烏龍の生茶を用い、複数種の撹拌を経て、揉捻は望月式揉捻機を使った。こうして生まれた紅烏龍は独特のフルーティな香りがした。

なおも発酵させようと撹拌を6回にしたこともあったが、撹拌数を増やすと失敗率も高まった。全神経を集中して精確に制御する必要があった。

杜蒼林によれば、高山青心烏龍の特徴はまろみのある味で、それで作った梨山紅茶は香りも味もダージリンより甘く繊細、しかも烏龍茶のフローラルな香りを帯びる。

「努力がチャンスを生むとは限りませんが、トライすればチャンスは生まれます」2013年、農糧署による第1回衛生安全製茶場評価において華剛茶業は標高2400メートル以上のエリアで唯一の5つ星製茶所に選ばれ、日本の静岡県で3年に1度催される世界お茶まつりに招待された。

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