注目ポイント
イギリスは世界の紅茶の中心的存在で、日本の緑茶は生産や文化面で世界のリーダー的地位にある。では台湾はと言えば、烏龍(ウーロン)茶が世界でその右に出る者はなく、誇れる存在だ。だが最近はそんな光景にも変化が見られる。台湾の茶職人の優れた製茶技術によって、台湾の風土を代表する烏龍茶の葉を用いた、全発酵茶である紅茶や、重発酵(50~70%)の東方美人茶、軽焙煎の清香烏龍などが生み出されているのだ。そしてそれらの茶がイギリスの紅茶コンテストや日本の緑茶コンテストでも受賞したというニュースが相次いで報道されるようになった。
文・曾蘭淑 写真・林格立 翻訳・松本 幸子
立秋を過ぎてなおも暑く、晴れ渡った苗栗三湾の茶園からは遠くに雪覇の山々が望めた。張家齊は茶樹「青心大冇」の様子を見て、「今年は異常気象で、チャノミドリヒメヨコバイ(ウンカ)があまり働いてくれませんでした(この虫が葉を食べることで良い香りが生まれる)」とため息をついた。それでも嬉しそうに、イギリスのグレート·テイスト·アワードからさきほど、今年再び最高の3つ星を受賞した通知があったと言った。
すでに28回目になる食品の国際コンテスト「グレート·テイスト·アワード」は、毎年100以上の国から何万という食品が参加し、食品及び酒類の審査員500名によって1~3つ星の受賞者が選ばれる。淘汰率は7割近い。今年(2022年)「単一茶園」部門で3つ星を獲得したのは4件、そのうちの2件を台湾が占め、それが張家齊の東方美人茶と、坪林の謝金土の包種茶だった。

記憶に残る茶を
張家齊は5年前から同コンテストに応募し、すでに15の星を獲得、台湾初の新記録も多い。2019年に「Formo Cha高山果香紅茶」で台湾人として初めて3つ星を受賞、2021年には、世界でたった3件の「単一茶園」部門3つ星のうち2件を、彼の2種の東方美人茶が受賞した。
世界トップクラスの茶園やブランドをしのぎ、いわば個人経営で茶作りをする張家齊は、笑いながら「突如出現ではなく、すでに3代続いた茶職人ですからね」と言った。祖父の張健業は日本統治時代に日本の緑茶を受託製造しており、父の張木栄は台湾で茶の焙煎機を発明した人物で、各種製茶機を日本やヨーロッパに輸出していた。
名茶の数々を飲んで育った張家齊にとって良い茶とは、祖父の時代に大きな鉄缶に入っていた、豊かな味わいの長く残る茶だ。彼は真剣な表情で「現在売られている茶には化学肥料の味がよくします」と言う。少し抵抗はあったが良い茶を作りたい一心で、彼は台湾中の茶畑を回ってプロに教えを請うた。そして自分の力を証明するため国際コンテストに応募した。
2018年、1キロ約3万元クラスの茶でグレート·テイスト·アワードに参加するも落選。審査のコメントは「記憶に残るものがない」だった。
「記憶に残る」茶を生み出すため、彼は目標達成シートを作り、横マスには発酵度、焙煎度、風味を、縦マスには湿度、温度、焙煎時間を配置した。またアインシュタインの「失敗しない人は成功もしない」という言葉を励みに、失敗を繰り返しながら細部にこだわり、理想の茶を目指した。
