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中国から援助された物資で選挙買収を行ったとして、台湾士林地方検察署(地検)は28日、台北市内湖区の里長(町内会長)に立候補していた女とその夫を反浸透法違反で起訴した。中国の介入を防ぐ同法が2020年1月に施行されて以来、同法での起訴は初めて。法曹関係者によれば、公職人員選挙罷免法の量刑に反浸透法の刑が加重され、2人には15年以下の懲役が科される。

(台北中央社)中国から援助された物資で選挙買収を行ったとして、台湾士林地方検察署(地検)は28日、台北市内湖区の里長(町内会長)に立候補していた女とその夫を反浸透法違反で起訴した。中国の介入を防ぐ同法が2020年1月に施行されて以来、同法での起訴は初めて。
起訴状によれば、清白里の里長候補者の女とその夫は中国から輸入
した新型コロナウイルスの家庭用抗原検査キットを選挙人に配り、その見返りに今月26日の里長選で候補者の女に票を投じるよう求めていたとされる。
候補者の女は2018年~19年に、夫は2018年~20年にそれぞれ中国・福建省の某総合実験区で街づくりに携わっていた。夫は前回、前々回の里長選に出馬していたが共に落選。今回は妻を立候補させ、支援を受けてはいけない対象かつ公職人員選挙罷免法違反の行為だと知りながらも、今年5月初旬、福建省の平潭総合実験区台湾事務工作部(台工部)の職員から、大量の検査キットを無償で提供可能だとの知らせを受けた。
2人は5~6月、名義貸しによる60人の個人情報で中国からの検査キット計6000個の輸入申請を行った。某地域発展協会のチラシや他人のフェイスブックを通じ、某里の住民は6月24日~26日に検査キットを受け取れると通知していた。
台北市衛生局は8月4日、地域発展協会の事務所で検査キット127セット(1セット5個入り)を見つけ、検察は9月、家宅捜索と事情聴取を実施した。女は今回の里長選で落選した。
起訴状によると、候補者の女は検察の聞き取りに対し、「当初は里長に立候補するつもりはなく、住民への検査キット配布は単純にチャリティー目的だった。出馬を決めたのは8月末になってからだった」との内容を述べていたという。
検察は、関連の証拠から2人は中国に一定の人脈がある上に、5~6月には検査キットの入手が難しく、候補者の女が台工部に感謝の意を表明していたことが示されたとし、これらから、台湾への浸透を企てる敵対勢力から物資援助を受け、選挙買収のために検査キットを利用していたことが見て取れるとしている。
検察は、2人の行為は反浸透法、公職人員選挙罷免法、医療器材管理法に抵触するとした。
法曹関係者によれば、公職人員選挙罷免法の量刑に反浸透法の刑が加重され、2人には15年以下の懲役が科される。
(劉世怡/編集:名切千絵)