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台湾で唯一、「車内レストラン」という新しい旅行体験ができると話題の「台北レストランバス」。高級ホテルと連携し、風景を見ながら5つ星ホテルの食事が楽しめる新たな観光コンテンツが生まれた舞台裏とは?
今夏、台湾交通部観光局は「安心な旅 百聞は一見にしかず」をテーマに日本からツアー客を台湾に招待した。その際に話題になったのが「台北レストランバス」。2階建てバスの上階を食事エリアにして、風景を見ながら高級ホテルの食事を楽しめるもので、ツアー客たちは有名スポットを周りながら、5つ星の食事を楽しんだ。
台湾で唯一の「車内レストラン」という新たな旅行体験ができるプロジェクトは、昨年12月、宿泊業と観光業の振興を図るために台北市と三晉総合マーケティング株式会社の協力で始まった。本稿ではプロジェクト始動の舞台裏を紹介する。

先進国には2階建てレストランバスがある。台湾は……?
三晉の徐取締役社長によると、プロジェクトが動き始めたのは2019年5月。台北市議会議員から台北市観光伝播局へ寄せられた「先進国には2階建てレストランバスがある。台北市は事業者に投資を促すような提案ができないか」という問いかけがきっかけだった。
台北市は関連法規を考慮し、交通部、道路総局、ARTC、VSCC、市交通局、観光局、商務局、衛生局に調整を依頼。三晉は、日本、タイ、香港、イギリスを4か月以上かけて訪れてレストランバスのリサーチを行った。設計・施工には半年以上を要し、総工費は約2300万台湾ドルに上ったという。
バス車両には欧州の4大バスブランド(VOLVO、Mercedes-Benz、Scania、MAN)の中でも、安定性、安全性、操作性、快適性に優れたVOLVOが選ばれた。開発拠点となったのは、中壢にあるVOLVOの整備工場。アフターケアの充実度や部品の供給状況、技術協力などを評価した結果、アジア最大のバス整備工場として知られ、主要エリアからアクセスしやすい同工場が最適な選択だったと徐社長は振り返る。
台北レストランバスの最大の魅力は、2階のダイニングエリア。パノラマの天窓から台北の街の賑わいを楽しめる26席が用意され、ビジネス用途にも活用できるようにモニターやオーディオ、ワイヤレスマイクも装備している。1階には食事を提供するための厨房スペースがあり、厨房機器に十分な電力供給が必要なことや、環境負荷を軽減するために電気バスが採用された。ちなみに、バスの車高は通常の2階建てバスより20cm以上高く、台湾で最も車高の高いツアーバスとなっている。

コロナ禍に翻弄されるも、数々の高級ホテルとコラボ展開
5つ星ホテルの食事と一流のサービスを堪能し、台北市街の100万ドルの夜景を眺めながら、笑顔の絶えない時間を過ごすことができる台北レストランバス。三晉は当初、小籠包で世界的に有名な鼎泰豊や洪師傅牛肉麵とコラボレーションするため、リハーサルを何度も行っていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でプロジェクト自体が延期。