2022-11-29 政治・国際

台湾・統一地方選「民進党大敗の構造は10月末に固まっていた」

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

中国が圧力を強める中で行われた台湾の統一地方選は、与党・民進党が記録的な大敗を喫し、蔡英文総統は責任を負って党主席(党首)を辞任した。だが総統選や、国会議員に相当する立法委員選とは違い、外交・安全保障問題は争点とはならず、経済政策など内政面で課題山積の与党に対し、各地の有権者が「ノー」を突き付けたかっこうだ。台湾の選挙に詳しい東京外大教授、小笠原欣幸氏が今回の台湾・統一地方選を総括した。

東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授

小笠原 欣幸

ほぼ予想通りの主要選挙結果

台湾の全22県市のうち嘉義市を除く21県市の首長選挙の結果は,民進党5、国民党14、民衆党1、無所属2であった。民進党にとって、4年前は獲得県市が6に終わり、惨敗したのだが,それをさらに下回る結果となった。筆者は1か月前に各県市の当落予想を作成したが,結果は金門県を除いてすべて的中した。筆者の長年の観察で,台湾の選挙はある時点で構造が固まりその後は多少の変動があっても結果は変わらないことが多いと分析している。その「ある時点」は、今回は1か月前の10月末であった。つまり民進党の大敗という構造が固まったのである。しかし、民進党の支持者の中には「勝てる」と考えていた人も多くいた。

11月中旬に台湾に入り、専門家の話を聞いたり、現場の活動を見たりもした。筆者は台湾で選挙がある年はだいたい6回訪台し、注目の選挙区を順番に回り現地観察をしてきた。しかしコロナ禍によって、今回は11月にようやく訪台できた状態で、現地調査はまったく不足していた。それでも限られた観察ではあるが、民進党大敗の流れが変わっていないことを確認できた。

筆者は台湾の総統選挙・立法委員選挙と県市長選挙について各候補の得票率と得票数を予測するExcelシートを毎回作成している。今回も投票が近づいた11月24日に最終予測を作成し、いつもと同じく研究者仲間に参考資料として送った。

結果,台北市,桃園市,新竹市,苗栗県など注目を集めた県市の各候補の得票率の予測はほぼ正確であった。一方,台南市のように当落は当たっていても得票率の予測は外れていたのもあった。この予測表はそのまま公開するので関心のある人は添付のファイルを見てほしい。

筆者は台湾政治の潮流を正確に理解していれば選挙の予測もできるはずだと考え、かなりこだわりをもって取り組んできた。総統選挙・立法委員選挙については2012年選挙で得票率予測の枠組みを作ることができ、そこから連続してほぼ正確な予測を続けることができている。一方、地方の県市長選挙については、22県市のうちの大部分は予測できるようになったが、いくつか外してしまう県市が毎回あり、地方選挙の予測の難しさを実感してきた。今回は自分自身納得がいく予測ができてよかったと思っている。

長年台湾の選挙を観察してきた経験からすると、あたりまえのことであるが、情勢を正しく認識して選挙戦略を立てた陣営が勝つ。その点で民進党にはよい教訓になったであろう。

© Photo Credit: Reuters /達志影像

今回統一地方選の背景

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