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26日に行われた台湾の統一地方選挙で与党・民進党は惨敗。台湾統一を目指す中国の習近平国家主席は、2024年の台湾総統選に向けて政権奪還を目指す親中の最大野党の国民党を側面支援し、蔡英文政権に揺さぶりをかけてくることは確実だ。そんな中、米ブルームバーグは同日、「台湾有事の際、誰が米国と共に立ち上がるのか」と題する論説を掲載。カギとなるのは日本、オーストラリア、インド、英国だと分析した。
今回の統一地方選挙について蔡英文総統は、「中国共産党大会の後に行われる初めての選挙に全世界が注目している」とし、対中関係を争点と位置づけ、事実上の政権への信任投票とした。だが、有権者には受け入れられなかった。
その結果、22の市長選挙と知事選挙で、改選前には7つを占めた民進党は桃園市など北部の3つの市を失い、台北市長奪還もならず、全体では5つの市長と知事のポストを得るにとどまった。
選挙結果を受け、蔡総統は26日夜に会見し、「台湾人民の決定を謙虚に受け入れる。私がすべての責任をとらねばならず、ただちに主席を辞任する」と表明。総裁職にはとどまるが、党内の求心力は今後低下するとみられる。
一方、先月の中国共産党大会で異例の3期目続投を決めた習近平国家主席の台湾への揺さぶりが一層強まることが予想される中、ブルームバーグは、台湾有事の際、米国にとって台湾防衛のカギとなるのは日本、オーストラリア、インド、英国だとした。
米国と日・豪・印の4か国は、当時の安倍首相が提唱した「4か国戦略対話(クワッド)」の戦略的同盟国だ。一方、米・豪・英の3か国は昨年発足した軍事同盟AUKUS(オーカス)を結んでいる。
米ジョンズホプキンス大学高等国際研究大学院のハル・ブランズ教授はブルームバーグに寄稿し、中国の軍事侵略に対抗するための決定的な要素は、米国がいかに軍事力と外交力、経済的な連帯を発揮できるかにかかっていると解説。「インド太平洋の地理と地政学に目に向け、米国のグローバルネットワークの連携を考えた時、日・豪・印・英の存在が最も重要になる」と結論づけた。
ブランズ氏はその4か国を先日訪問し、各国の政府要人に取材。中でも、日本は最も切実に中国からの脅威を肌で感じる国だったと説明。「西太平洋における非常に攻撃的な中国の動きの危険性が高まりつつあり、その時間は比較的短くなり、日本が深刻な脅威にさらされるという感覚は明らだ。特に日本の南西諸島と台湾の距離はわずかだ」と述べた。
その上で同氏は、日本の防衛力拡大は重要で早急な課題だとし、今後5年間で防衛費は倍増され、南西諸島のいくつかの島は要塞化されるだろうと説明。日本が導入を検討している米国製の「トマホーク」巡航ミサイルなど長距離の精密誘導兵器は対中国や対北朝鮮に有効だと強調した。
同氏はまた、日豪両国と米国との協力関係が想像以上に緊密であることを印象づけられたとし、もし中国が台湾を侵略するとすれば、その時期がいつなのか、どういったシナリオが最も可能性が高いのか、それらに対応するベストな作戦などについて、それぞれの考えを共有していると明かした。