2022-11-25 ライフ

蔡明亮監督「青春神話」は90年代台湾ティーンエイジャーの漠然とした気持ちを表現することに成功

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注目ポイント

それは、権威が倒され、グローバル化した情報がまだインターネットで手に入らない時代の話である。当時のティーンエイジャーの戸惑いは、台湾史上最も強烈だったかもしれない。世代の早い5年生(民国50年代生まれ)は指導者や権力に反発でき、遅い世代は共感できるアニメやポップカルチャーがあり、無数のオタクを生んだのである。しかし、6年生(民国60年代生まれ)は?


しかし、6年生前半の世代は、社会の変化に対して漠然とした気持ちで向き合うしかなかった。映画の終盤、アクイはアザーに台北を離れると言い、アザーは彼女を抱きしめて、これから行く先がないと言って泣くしかない。これは、当時の若者の姿を反映したものであった。 今の世代は、この漠然とした気持ちから解放されているだろうか?おそらく、そうではないだろうし、インターネット上の情報が爆発的に増えている今、なおさら自分の思考を持っていないだろう。


映画の終盤のシャオカンは、唯一、成長し覚醒した人物である。しかし、彼はとても引っ込み思案でよそよそしく、さらに自分が好きなのは男性だと気づいた。台湾社会で同性恋愛についてオープンに語れなかった時代に、台鉄台北駅の線路地下化のラストシーンでの向かうところのない寂寥感は、同世代の若者よりも強いのではないだろうか。


6年生後半の私は、映画に登場する台湾の文物にとても懐かしさを感じた。例えば、HONDAのバイク、名流100(バイク)、豬哥亮氏の広告、CALL機(ポケベル)、ヘルメットを被らないことなどは、小学校での日常生活をそのまま映している。


 

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