2022-11-25 流台湾

超巨大バナーが街を覆う! 日本とはまるで違う台湾の選挙ポスターデザイン①

注目ポイント

世界でも有数の政治熱がある国、台湾。選挙活動に厳格なルールが設けられている日本と異なり、建築の壁面を覆う超巨大バナーや横断幕などを使った賑やかなアピールが繰り広げられ、選挙期間中は街全体が熱気に包まれる。台湾を拠点に活動するデザイナーが、選挙戦を盛り上げる選挙ポスターのデザインに焦点を当て、日本と比較しながら、2回に分けて解説していく。

台湾と日本の状況

選挙バナーが溢れるビル壁面(士林捷運站横)

「九合一」と呼ばれる地方統一選挙を11月26日に控えた台湾の街を歩けばいたる所にポスターや横断幕、のぼり、バナーなど様々な形態の選挙に向けた広告が掲げられており、とても賑やかでパワフルな印象を受ける。特に日本人として衝撃を受けるのが超巨大バナーだ。階を跨ぐほどの大きさのあるバナーが、建物の壁面にデカデカと張られており、通行者の目を引いている。

建築物に掲げられた巨大バナー(台北市)

それに対して、日本は非常に消極的な印象を受ける。選挙前になっても台湾と比べ物にならないほど、広告を目にすることが少ない。そもそも政治に対して消極的な国民性もあるが、選挙活動やそれに関わる販促物に厳格なルールが設けられており、サイズから配布可能枚数に至るまで厳しい制限があるのも理由の1つに挙げられるだろう。

日台のルールと概念

候補者の名前が入っていない政治活動用ポスターと、公営掲示板に掲示された選挙運動用ポスター(奈良)

先ず、日本では公職選挙法によって「政治活動用」と「選挙運動用」の2種類のポスターが定義されている。どちらも細かなルールや例外があり少し複雑だが、大まかな分類として「政治活動用」は、選挙期間以外のみ掲示が許可されている、もしくは候補者の名前が入っていないもので、直接投票結果に影響を与えづらいポスターを指す。後者の「選挙運動用ポスター」は、主に指定された公営掲示板に掲示されるポスターであり、サイズも厳格に決められている。

公営掲示板に掲示された選挙運動用ポスター(奈良)

台湾では、掲示期間や場所に規定があるものの、日本のようなデザインに関わる規定は特に見当たらない。台湾社会では、そもそもアイデアを重視する傾向があり、非常に柔軟で幅広い広報物となっている。例えばバスのラッピング、ビル壁面の巨大バナー、店舗の看板など、街のありとあらゆる面や媒体に掲示されている。そういう観点では、日本人が抱くような「選挙と言えばポスター」といった概念はなく、「選挙のための一連の広告」といったイメージの方が近い。

様々な形態の広告(台北市)

台湾の興味深い特徴としては、広告にQRコードが配置されており、読み取ることでLINEなどのSNSアカウントへ誘導し、チャットや通話を通して直接コミュニケーションをすることができる。またQRコードがなくても電話番号が記載されている場合も多い。
こういった広告は、グラフィックで訴えかけるだけではなく、更にもう一歩踏み込んだアクションを促し、有権者からの声を受け入れようとしていることが、明るくオープンな台湾らしさを感じる。

SNSのQRコードや、電話番号の入った広告(台北市)

規制の多い日本への反応

台湾のメディアには、このような日本の制限が表現と言論の自由が保証されている民主主義国家に相応しくないのではないかという論評も存在する。しかし、これは資金力の差で不公平が生じないことを目指した結果であって、無闇に規制を設けているのではない。反対に台湾では、利用できる経費の額に制限がある。

ただ、デザイナーの私の視点からは、両国のどちらもが制限のある中で、メディアの数が本質的な問題の解決にはなり得ないと思える。目に触れる機会を増やすのではなく、実現したい政策やその想いを有権者に理解してもらえるよう、真摯にデザインすることが健全な民主主義のために求められる広告の価値であると、そう思われてならない。


 




 



 

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