2022-11-27 ライフ

連載「あの街の“正港台湾料理店”」第8回:台湾綺鶏(東京都世田谷区)

注目ポイント

正港とは「正統な、本場の」などを意味する台湾語。「あの街の“正港台湾料理店”」は、日本で台湾の食文化にこだわる料理人のストーリーと食を追い求める連載です。第8回目は、銀座で台湾屋台料理の人気店を営んだオーナーが、多くの若者で賑わう下北沢でオープンした「台湾綺鶏(タイワンキッチン)」を訪れた。

台湾唐揚げを主体としてテイクアウト専門で始めたという「台湾綺鶏(タイワンキッチン)」は、若者や買い物客で賑わう下北沢南口商店街に面し、狭い間取りながら街並みにもフィットした洗練された店構えだ。2020年4月に開店し、その半年後に改装したという店内には8席分の飲食スペースが設けられ、その場でも出来立ての料理が味わえる。

図書館で本を読んでいる人

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当初はテイクアウト専門店としてのスタートであったが、現在は店内でも飲食ができるよう改装されている。噂を聞きつけた多くの台湾人が遠方からも訪れる。

7歳の時に家族とともに来日したというオーナーの許維志(キョ・イシ)さんにとって、台湾と日本でシェフをしていた父親の影響もあり、幼いころから料理は身近な存在であったという。しかし本格的に料理の世界に飛び込んだのは、ロサンゼルス留学で経済学を学び、そのまま現地で仕事を探していた時であったと語ってくれた。

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オーナーの許さん。米国に学び、別の道に進むことも考えていたというが、母親からの強い要請を受け料理の世界へ。

その当時、父親が銀座で小皿料理中心の「来来」という台湾料理店を営んでおり、母親から父に代わって店の運営をしてほしいと懇願されたのがきっかけなのだとか。そして日本に戻り約1年をかけてすべてのレシピを受け継いで、料理にも様々な改良を加えながら多忙な店を切り盛りしてきたという。お店は大繁盛で経営も順調だったとのことであるが、約12年営業を続けたのちに、40歳を迎えた自身のライフスタイルを再考する必要もあり思い切って店を閉じたのだという。

そして自身の再稼働として現在の「台湾綺鶏」を始めるきっかけとなったのが、宜蘭に住むおばあちゃんが昔から作っていた秘伝のタレだったとのこと。沖縄の珍味としても知られる“豆腐餻(とうふよう)”を使ったタレに鶏肉をつけ込むと、その発酵作用によって実にやわらかい食感の深みのある味へと変化することを発見。以降様々な試行錯誤を繰り返し、看板メニューとなるジューシーな台湾唐揚げを完成させたのだという。

皿の上の食べかけのケーキ

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看板メニューの炸鶏排(台湾唐揚げ)。カリカリの表面とジューシーな中身とのコンビネーションは抜群。何度でも食べたくなる実に深みのある仕上がりだ。

60品目にもおよぶレシピを持つ許さんであるが、台湾綺鶏で提供するメニューは、台湾唐揚げをはじめとして、小皿料理からご飯物、麺類にいたるまで、店のスタイルに合わせた選りすぐりのメニューだ。そして、圧倒的多数のお客様は、SNSで紹介されたことがきっかけで、その味を求めてやってくる日本在住の台湾人なのだとか。そのことからも、本場の人たちの舌をも満足させる本格的な味を実現しているのだと容易に理解できる。

数々のレシピの中から、店のスタイルに合わせたバリエーション豊かなメニューが揃っている。その時々の気分ですべての料理を味わってみたくなる。

「食材の質と料理の基本を大事にしたい」という言葉の通り、店で使用するすべての肉類は一切冷凍物を使わず、十分に吟味した“生”しか使わない。冷凍物だと気泡が発生してどうしても大切な食感が失われてしまうのだとか。さらに、ウーバーの注文で人気No.1の魯肉飯(ルーローハン)を例にとると、三元豚の皮の部分から丁寧にコラーゲンを抽出して使い、味付けの醤油も厳選した本醸造醤油の“たまり”を使って徹底的に味を究めていくのだという。

皿の上の料理

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三元豚を使って丁寧に仕上げられた魯肉飯(ルーローハン)。皮の部分にある肉の臭みを取り除いたやさしい味付けにしているという。
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