2022-11-23 観光

世界で愛される台湾のB級グルメ「刈包」

注目ポイント

この十年あまり、世界で知られるようになった台湾の料理や食品と言えばタピオカミルクティや小龍包が挙げられるが、刈包(グアバオ。蒸しパンに豚肉や漬物を挟んだ料理)も忘れてはならない。パンにはさんだ肉はおいしく、片側だけが開いたパンの形状は、さまざまな創意をかきたてる。台湾語でグアバオと呼ぶこの料理のことを、あなたはご存知だろうか。

文・鄧慧純 写真・林旻萱 翻訳・山口 雪菜

刈包(「割包」とも書く)は台湾伝統の美食である。蒸しパンの間に豚肉、ピーナッツ粉、酸菜(高菜漬け)、香菜(コリアンダー)などを挟んだものだ。まるで虎が大きな口を開けて肉にかぶりついているように見えるため「虎咬猪」とも呼ばれ、その発音から転じて「福咬住」とされ、縁起の良い食べ物とされる。

「源芳刈包」の店主、呉黄義は刈包の中にはさむ豚バラ肉の食感にこだわっており、調理のプロセスは数段階に分かれる。

刈包の起源

最初に刈包が書物に出現するのは1927年の黄旺成の日記で、「今日は旧暦の尾衛(忘年会)、従業員を労うために虎咬猪を作るらしい」とある。台湾の食文化を研究する台湾師範大学台湾語文学科の陳玉箴教授は、この一文からこう解釈する。「『刈包』は、昔は『虎咬猪』と呼ばれた。文献によれば、当時は主に商人が食しており、庶民の間には普及しておらず、特定の季節のみに供されたようだ」物資が乏しかった時代、豚肉もめったに口に入るものではなく、刈包を食べる機会は特別な日や忘年会、祭りの時などに限られた。

刈包の蒸しパンは小麦粉で作られている。陳玉箴によると、台湾は米食が中心だが、清の時代から小麦粉も食べられていた。ただ、小麦粉は高価な輸入品であり、庶民にはなかなか手の届かないものだった。

陳玉箴が昔の新聞を調べたところ、刈包が庶民の間に普及したのは1970年代以降のことで、新聞の生活欄に登場するようになった。

台南「阿松割包」は昔からの作り方を守り、蒸しパンに手作業で切り目を入れている。

海外へ進出

長年外国に暮らすフードライターの蔡珠児は、海外での刈包の流行を観察してきた。「わずか20年の間に刈包は海外でよく食べられるようになった」と言う。「刈包は食べ物の一つのモチーフである。その構造はパンの間に何かを挟んだもので、これに類する食べ物は世界の多くの食文化の中にある。イギリスのサンドイッチ、アメリカのハンバーガー、イタリアのパニーノ、ベトナムのバインミー、中国西安の肉夾饃、中東のケバブなどだ」このように類似した食べ物が多いからか、外国人の多くは台湾の刈包に違和感を持たず、受け入れられやすいのかも知れない。

海外での刈包ブームについて蔡珠児はこう説明する。まず2006年に韓国系アメリカ人のデビッド·チャンがマンハッタンに開いたMomofukuが刈包とラーメンを打ち出して有名になった。2009年には台湾系二世の黄頤銘がニューヨークに本格的な台湾刈包の店BAOHAUSを開き、祖母から教わった豚バラ肉の味を売り物にした。

ヨーロッパでは2013年、台湾人女性の張爾宬と夫の香港系イギリス人の鍾承達が東ロンドンのマーケットに刈包の店を出し、2016年にはロンドンのソーホーに台湾軽食の店を出した。看板には大きく「BAO」と書かれており、今では6店舗を展開、7年連続してミシュランのビフグルマンに選ばれている。このほかに、香港の「Bao Wow」「Little Bao」、バンクーバーの「Bao Down」など、いずれも店名に「Bao」、つまり「包」の発音を使っている。以前は「包」はSteamed bunと訳されていたが、刈包がブームになるにつれて、Baoが世界に共通する言葉となった。

イギリスのレストランBAOは刈包の新しいイメージを作り上げた。蔡珠児が同店を訪れたところ、店では刈包をミニサイズのパーティフードのようにしており、お客はカウンターを囲んでビールやタピオカミルクティ、あるいはカクテルなどを飲みながら刈包をつまんでいた。刈包は若者の最先端の流行となり、都会や社交と結びついているのである。

刈包の形は、料理人に発想の空間をあたえる。「小龍包のように餡を完全に包み込んだ形だと、それを変えるのは難しいですが、刈包は片側が開いているので、中に何を挟むか、創意がかきたてられます。定番は豚肉ですが、チキンや魚、キムチ、さつま揚げ、アイスクリーム、チョコレート、代替肉など、何でも可能です。まだまだ発展中で、多くの可能性があります」と言う。

国内に戻ってみよう。台湾と刈包との関係はと問うと、蔡珠児は「誰が最初に作ったのかは重要ではなく、誰がそれを成功させたかが重要だと思います」と言う。料理のルーツを研究したことのある彼女は、私たちの盲点を突く。「華人圏の中で刈包を最もおいしく作れるのは確かに台湾人です。これまで私たちは中に挟む肉をどう調理するか、脂身と赤身の比率、それに、ピーナッツ粉や酸菜の比率などに注目してきました」

究極の刈包

台北の華西街夜市にある「源芳刈包」は1955年の創業で、すでに60年の歴史を持つ。ミシュランのビフグルマンでも評価される名店だ。店主の呉黄義は毎朝6時に市場に行って、その日に必要な豚肉を仕入れる。大釜に豚バラ肉を入れ、漢方の香辛料と砂糖と醤油で1時間余り煮込み、肉を一度取り出して冷ます。お客の入りを見て、その都度、必要な量の肉を小鍋にとって再び煮る。二度に分けて火を入れるのは、煮込みすぎて肉が崩れてしまうのを避けるためだという。だからこそ源芳刈包の豚肉は、皮の部分のぷりぷり感が残っているのである。

台北の公館エリアにある「藍家刈包」も3年連続してビフグルマンに紹介され、国賓晩餐会に料理を提供したり、CNNで報道されたこともある。オーナーの藍鳳栄にその料理の腕について聞いてみると「母から受け継ぎました」と答える。特別な秘訣などなく、台湾産の豚肉を使い、エシャロットやニンニクを油で炒めて香りを出し、そこへ肉を加えて炒め、それから黒砂糖と醤油を入れて4~5時間煮込むということだ。

現代人は健康に注意するようになり、多くの人が豚の脂身を好まなくなった。そこでお客からのアドバイスを受け、藍鳳栄はメニューを修正し、赤身肉多め、脂身多め、半々などを選べるようにした。また、肉に添える高菜漬けは客家のもの、ピーナッツ粉は創業百年の老舗のものを使っている。600グラム600元の香菜を使ったこともあり、物価が上がっても、材料で手を抜くことはない。台湾大学の学生街であることから、この店は一日に2000個の刈包を用意している。学生時代からの常連が今では教授になるなど、すでに多くの人にとって思い出の味となっている。

台南の永楽市場内にある「阿松割包」も少なくとも80年の歴史を持つ老舗だ。初代の林天旺は、福建省にいたころから食堂を開いており、台湾にわたってきてから、その料理を兄弟たちに教えた。2代目の林清松は彼から刈包のレシピを受け継ぎ、数十年にわたって店をやってきた。3代目の林晁輝は店を引き継いで十年になる。「阿松割包は、一番最初は蒸しパンに煮汁をかけて浸し、肉と別々に食べるものだったのですが、この地域の人々はそういう食べ方に慣れていなかったので、改良を重ね、今の肉を挟む形に変わりました」と林晁輝は言い、この店の刈包の具やトッピングが他とは違う理由を説明する。

彼らは毎日、午前1時から漢方薬で豚のタンや豚の頭肉を煮る。部位によって求める歯ざわりが違うので、鍋から引き上げる時間も異なる。「また、濃い醤油で煮込むわけではないので、食材の鮮度を保つのにも注意が必要です」と話す林晁輝は、作業の手を休めることなく、調理の過程を説明してくれる。肉類の処理が終わったら、無料で客に提供するスープを仕込むが、スープの種類は季節によって異なる。この店の割包のパンの部分は、マントウのような食感で、毎朝一つずつ切れ目を入れる。肉に添えるトッピングも他の店とは違う。高菜漬けはカラシナの根の部分を使うため、シャキシャキしている。このほかに大根の漬物も加えるのでさっぱりと食べられ、最後に特製のピーナッツ粉をかける。

「Love Bao Taiwanese Kitchen」という店を経営する羅維綱は30年余り台湾を離れていたが、2015年に帰国して基隆に刈包店を開いた。「廟口付近に店を開いたところ、外国人観光客に評判がよく、これなら海外にも市場があるかも知れないと思いました」と言う。そうして2017年、彼は拠点をアメリカに移し、2019年に開店、コロナ禍の影響もあったが、経営は続いている。

彼が店を開いたノースカロライナ州は華人の多い地域ではないが、台湾から来た刈包は地元でも好評を博している。西洋人なら豚肉よりチキンの方が好まれるのではないかと思いがちだが、「来客の10人中9人は、台湾の伝統の味の方を注文し、気に入っていただいています」と言う。

羅維綱が引き継いだのは義父のレシピだ。まず豚バラ肉を焼くことで余分な脂肪を取り除き、それで油っぽくならないようにしている。

呉黄義は「私たちは、ここでしか食べられない味を出しています」と言う。藍鳳栄は「家の味を守っています」と言い、林晁輝は「家業を守り続けられることに満足しています。この味と記憶を維持していきます」と語る。また羅維綱は「私の願いは、外国人に台湾の食べ物を通して台湾を知ってもらうことです」と言う。

これだけの人が、汗を流しながら厨房に立ち、「舌の記憶」を守り続け、「美食」で人と人とのつながりを生み出している。この味を好きにならずにいられるだろうか。

「阿松割包」は他とは違い、豚のタンを挟んでいる。これに店主が煮込んだスープを合わせるのが60年以上続いてきたおいしい食べ方だ。
刈包は世界的に流行し、若者が好む新しいテイストとなっている。写真はノースカロライナ州にある「Love Bao Taiwanese Kitchen」の刈包。(Love Bao Taiwanese Kitchen提供)
台湾は世界の華人圏の中でも刈包が最もおいしいエリアだ。
ピーナッツ粉、高菜漬け、香菜は刈包の定番のトッピングだが、店によってそこにも独自の秘訣があり、独特の味を出している。
刈包は中が見えるため、何を挟むか想像力と創意をかきたてると蔡珠児は言う。
刈包は台湾のストリートフードである。ミシュランのビフグルマンに選ばれた台北市公館エリアの「藍家割包」には行列ができる。

 

転載元:台湾光華雑誌

 

 




 

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