2022-11-22 政治・国際

24年総統選にどう影響?与党苦戦の最終盤-台湾・統一地方選【近藤伸二の一筆入魂】

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

4年に1度の総統選の前哨戦に位置づけられる台湾の統一地方選。総統選と違って外交課題が争点になりにくい統一地方選では、蔡英文政権のコロナ対策への不満や、論文盗作問題による候補者差し替えのイメージダウンなどで与党・民進党が苦戦を強いられています。ジャーナリスト・近藤伸二さんからの寄稿です。

ジャーナリスト 近藤伸二


台湾で11月26日、2024年の総統選の前哨戦となる統一地方選が行われる。与党・民進党は苦戦を強いられているが、最大野党・国民党も決め手に欠け、接戦となっている選挙区も多い。選挙結果は各党の勢いを反映し、勝利を収めた党は2年後の総統選に弾みが付くだけに、各党とも終盤の追い込みに全力をあげている。

統一地方選は4年に1度の総統選の中間年に実施されるため、米国の中間選挙と同様、現政権に対する有権者の審判の意味合いが強い。県議や市議など9種類の選挙が同時に投開票されるが、各党が最も力を入れているのが計22ポストを争う県市長選だ(嘉義市長選は候補者1人が死去したため、12月18日に延期)。特に、行政院(内閣)直轄市である台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の6市長選は注目度が高い。

18年の前回統一地方選は、22ポストのうち国民党が15ポストを制し、民進党の6ポストを大きく引き離した(他に無所属が1ポスト)。蔡英文政権が取り組んだ年金や労働法制改革が不人気だったことなどが原因で、蔡総統は責任を取って民進党主席を辞任し、一時は20年の総統選出馬も危ぶまれたほどだった。

だが、19年に入って、香港で政府に対する大規模な抗議デモが相次いだことで、台湾の政治状況も一変した。香港政府は中国政府と一体となって抗議活動を力ずくで押さえ込み、高度な自治を50年間保障するはずの「1国2制度」の破綻が明らかになった。それに伴い、中国が台湾統一にも適用するとしている「1国2制度」に断固反対を訴える蔡氏の支持率が急上昇し、総統選で再選を果たした。

また、前回統一地方選では、高雄市長選に出馬した国民党の韓国瑜氏がユニークな言動やSNS(ネット交流サービス)を駆使する選挙戦で一大ブームを巻き起こし、国民党の大勝に大きく貢献した。

韓氏は余勢を駆って総統選に挑んだものの、蔡氏に大差で敗れた。20年6月には、市民から「市長職をないがしろにした」とリコール(解職請求)を申し立てられ、住民投票の結果、失職した。補欠選挙で民進党候補が当選し、市長ポストを奪還した。

今回の統一地方選は、台湾の調査機関やメディアの各種世論調査結果によると、22県市長ポストのうち、国民党は十数ポスト獲得をうかがう勢いなのに対し、民進党は一桁にとどまる見通しで、今のところ、国民党が優位に選挙戦を進めている。ただ、半数近くの県市で支持率が拮抗しているうえ、台湾の選挙は候補者や関係者のスキャンダルなどを巡って情勢が急変することもあり、結果は予断を許さない。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい