2022-11-17 政治・国際

ポーランドに着弾はウ軍の迎撃ミサイルか 前日には米露諜報トップが核兵器めぐり会談

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

ウクライナと国境を接するポーランド領内で15日、ミサイルが着弾し、ポーランド市民2人が死亡した。欧州では一気に緊張が高まったが、着弾したのはウクライナ軍の迎撃ミサイルだった可能性があり、現在調査中だ。一方、米中央情報局(CIA)とロシアの対外情報庁(SVR)のトップがミサイル着弾の前日、戦況のエスカレーションを回避するため、非公開で会談していたことが分かった。

ポーランド政府は15日、ロシア製のミサイルが同日午後、ウクライナに隣接するポーランド東部プシェボドフの農村部に着弾し、2人が死亡したと発表した。ロシアのウクライナ侵攻後、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に着弾し、犠牲者が出たのは初めて。ロシアとNATO間の緊張が高まる恐れもあり、主要7か国(G7)とNATOの緊急首脳会合が16日、G20首脳会議開催中のインドネシア・バリ島で開かれた。

AP通信によると、複数の米当局者は初期段階の分析として、ロシアのミサイルを迎撃するためにウクライナ軍が発射したミサイルが着弾したとみられるとの見方を示し、バイデン米大統領も、ウクライナから飛来した対空ミサイルだった兆候があると説明。記者団に「ミサイルの軌跡から考えるとロシアから発射されたとは考えにくい」と述べた。

ポーランドのドゥダ大統領やNATOのストルテンベルグ事務総長は、ロシアが発射したミサイルに向けてウクライナ防空部隊が撃った可能性を指摘。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「我々のミサイルではないと確信している」と記者団に語った。

一方、ロシア国防省は、「ロシアはウクライナ・ポーランド国境でいかなる攻撃も行っていない」と否定する声明を発表している。

まだ調査は始まったばかりだが、もし、ロシアがポーランドを含むNATO加盟国の領土を爆撃したとすれば、NATOの条約第5条が発動されることになる。第5条とは、「NATO加盟国に対する攻撃はNATO全体の攻撃とみなす」という原則だ。1949年にソビエト連邦の対抗勢力として発足して以来、これが30か国からなる同盟の基盤だった。

そうしたロシアと西側との一触即発の事態を避けるため、米国のバーンズCIA長官は14日、ロシアのナルイシキン対外情報庁(SVR)長官とトルコの首都アンカラで非公開の会談を開き、これ以上戦況をエスカレートさせ、核兵器使用に発展させないよう伝えていたことが分かった。ポーランドにミサイルが着弾する、まさに前日だった。

英BBCによると、対面による両者の会談はロシアがウクライナに侵攻して以来、両政府間で最高レベルの接触となった。バーンズ長官は2005年~08年までロシア大使を務め、ロシア語も話す。

ホワイトハウスは、会談が戦争終結について話し合うことが目的ではなかったと強調。バーンズ氏は「ロシアによる核兵器使用がもたらす結果」と「戦略的安定へのエスカレーション」のリスクに関するメッセージをナルイシキン氏に伝えたとした。

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