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主要20か国の首脳会議(G20)が15日、インドネシアのバリ島で開幕したが、招待されていたプーチン露大統領は欠席。ウクライナに侵攻したロシアへの対応をめぐり、開幕から参加国の足並みの乱れが露呈している。特に東南アジア諸国は消極的で、中でもベトナムなどインドシナ3国は西側と大きな隔たりがある。その理由を探った。
苦戦を強いられているロシア軍は、一時占領下に置いたウクライナ南部ヘルソン州から完全撤退し、西側の制裁によりロシア経済が混乱をきたす中、「プーチン大統領が東に目を向けると、東南アジアの旧友は直接視線が合うことを避けているようだ」と中東のニュース専門局アルジャジーラは表現した。
同局は、積極的に目を背けている国もある中、同地域におけるロシアの「最後の真の友人」はミャンマーだと指摘する。
アルジャジーラによると、ロシアはこれまで東南アジアを重要な戦略的関心を持たないできたが、インドシナ半島のベトナム、カンボジアとラオスに対しては、「長く、感傷的なつながりがある」という。特にベトナムは、1960~70年代のベトナム戦争で、親米政府の南ベトナムとの戦いで、支援してもらった旧ソ連に対する恩義は忘れていない。
そのため、ベトナムとラオスは、ロシアによるウクライナ侵攻後の国連による対ロシア非難決議と、ウクライナ東・南部4州の一方的な併合に対し、無効を宣言する決議では棄権し、国連人権理事会での理事国としてのロシアの資格停止決議には反対票を投じた。
14日の国連総会では、軍事侵攻による損害賠償をロシアに求めるとする決議案の採決が行われ、94か国が賛成し、採択された。棄権した73か国にはベトナム、カンボジア、ラオスが含まれた。逆に、東南アジアで賛成したのはシンガポールとフィリピンだけだった。
ベトナム・ホーチミン市人文社会科学大学のヒュン・タム・サン講師は、棄権票を投じることは「完全に合法」だとする一方、「倫理的に疑問」だと言う。ベトナムは「国家主権と領土の完全性を守るという原則を堅持することを怠った」と、このことは、歴史的に中国、フランス、米国という外国勢力の支配から独立を勝ち取った国として、「小さな間違いでは済まされない」と強調した。
「ベトナムの行動は批判を避け、ロシアからの報復のおそれを考慮してのもの」だとヒュン氏は説明。さらに、両国の貿易額は今年1月~8月だけで25億ドル(約3478億円)に上る。また、ロシアはベトナムの石油や天然ガスのエネルギー分野で最大の投資国で、軍事面でもロシアからの兵器輸入額が最大となっている。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学キャンベラ校の政治学者カーライル・セイヤー名誉教授は、「ロシアが弱体化することはベトナムにとって国益ではない」と指摘した。
常に脅威として国境を接する中国との関係を考えた時、ベトナムがロシア支持の対応は理解されるとアルジャジーラは解説する。1979年に中国人民解放軍がベトナムに侵略してきたことで始まった中越戦争などでは、ベトナムはロシア(旧ソ連)を中国に対するカウンターウエイトとして頼り、支援を受けてきた。