注目ポイント
今年9月下旬、日本と台湾は時を同じくして水際対策緩和を発表した。タイガーエア台湾の会長は新千歳、東京などを訪問し、グランドスタッフの人員確保や設備などの受け入れ態勢整備を要求した。また宮崎県は台湾からのインバウンドの増加を見込んで、総勢22人を台湾に送り込み中華航空と直行便の再開交渉を行った。
水際対策緩和で隔離0日に
日本の水際対策が緩和されてから1か月以上たった。観光地では欧米人やアジア人がマスクをして日本の感染予防ルールを守りつつ観光を楽しんでいる報道をよく見るようになった。水際対策緩和が発表された直後は台湾人インバウンドの増加が期待された。コロナ前の台湾人観光客は国別ランキングでベスト3に入っていたほどだからだ。日本に入国したあとの隔離、台湾に帰った時の隔離がともに0日になったのだから、これまで我慢してきた反動で観光客が爆発的に増えると思われた。成田、羽田、関空、福岡など大都市空港から入ってくる外国人観光客は確かに増えた。地方都市も、直通航空便の再開とともにインバウンドの増加を見込んだ。だが、思わぬ伏兵が現れた。
タイガーエアの受難
様々な緩和措置によってこれまでの閉塞した社会が大きく変わり始めた。日本政府が実施する「全国旅行支援」により、コロナ禍で停滞していた人の移動が国内・国外ともに動き出した。国内の観光客誘致はもちろんのこと、昨今の円安で日本での消費に割安感が感じられる外国人観光客の激増も期待し、外国からの航空便を、せめてコロナ前の水準にまで戻そうとする動きもあった。タイガーエア台湾の会長陳漢銘氏は、10月中旬、新千歲空港、国土交通省、仙台空港、茨城空港、岩手県庁などを訪問し、タイガーエア便を受け入れてもらえるようグランドハンドリングの充実を要請した。その背景には、タイガーエア台湾の格安航空便が、受け入れ空港側の人員不足などにより日本ツアー便をキャンセルされ、キャンペーンで航空券を購入した顧客からクレームが殺到し会社側が賠償案を提示したことが挙げられる。また最近の報道によると、受け入れ空港の人員不足のため航空便がキャンセルとなり、来年旧正月の大型連休ツアーが取り消され、楽しみにしていた旅行客は悲鳴を上げたというニュースもあった。

インバウンド激増を狙う地方都市
11月8日には宮崎県から副知事や県議会議員総勢22名が訪台し、中華航空と直行便再開の交渉をした。コロナ禍から立ち直りつつある日本社会だが、地方都市はまだ立ち直っていない。例えば九州についてみてみると、台湾人旅行客は福岡空港を利用するか、東京経由で九州各地へ行くしかない。台湾便が福岡にしか飛んでいないからだ。これだと他の県民はとても不便だし、特産品の輸出も制限されてしまう。
グランドハンドリングは追い着けるか?
2020年初頭に日本に上陸した新型コロナの感染者数がだんだん増えていき、経済活動にも大きな影響を与えるようになった。営業自粛や外出自粛、外食自粛などの対策のため多くの企業や店舗でリストラ、雇止めなど人員や設備の削減を行った結果、社会経済が復活した際の体力が残っておらず、元の規模に戻せないところが多い。航空業界も同様で、水際対策で外国から旅客機が入ってこなくなったおり、グランドハンドリング関連業務が縮小された。今年10月11日から入国者数上限撤廃や個人旅行解禁などが見直されたが、空港の、特に地方空港のランプサービス、客室サービス、貨物郵便サービス、機体整備、車両整備、航務業務、旅客業務で人手不足が発生し、航空便を再開しても到着空港で対処が難しいという事態に直面した。