2022-11-12 観光

旅先の土地を知るなら伝統的な美容院でヘアカットをすること

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注目ポイント

駅前から半径1kmの範囲内で、街歩きやグルメ探しをするのはもちろんだが、その日、私が最も興味をひかれたのは、街の美容室の生態を観察することだった。


 

頭城老街を歩いていると、道端に連なる美容室に驚かされる。その理由は、美容室の個性というよりも、その数の多さだ。開蘭路を見渡すだけで美容室が何軒もあり、そのほとんどが伝統的な姿を保っている。

その日の午後の時間は、まるまる頭城老街を散策することに費やした。もともと午後の間でどのくらいの数の美容室を見つけられるか計算をしようとしたが、いざ指を折って数えてみると、指で出せるような答えではないことが分かった。

そこで髪に触れ、まだ余裕があることを確認し、最もにぎやかな道、開蘭路にある見た目が一番伝統的な美容室を選び、この街と美容室の関係を知るために髪の時間を費やすことにした。


 

宜蘭頭城:雅方理髮廳

「その土地を知りたければ、まずその土地のローカル市場に足を踏み入れることから始めよ」という言葉がある。 この2年間で、美容室にも同じようなことが言えると分かった。それから、ある土地を訪れる度についでにヘアカットをするようになった。

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もちろん、美容室は必ず伝統的なタイプを選ばなければならないという原則がある。なぜなら、そこでは一般的に室内を大々的に飾ることがなく、場合によってはなんと、自宅の一部を改造して美容室にしていることもあるからだ。よく注意して見てみると、伝統的な美容室には、自宅と店を隔てる扉があり、人がよく出入りしていることが多く、その地域の人々の生活の様子をリアルに表している。しかし、何よりも一番重要なのは、彼らは一般的にお客様と会話を交わすのが好きなことだ。

今回選ばれた「雅方理髮廳」は、夫婦で経営している美容室だ。私が現れたのを見た店長は、手に持っていた新聞をゆっくりと置き、私をカットクロスで包んでくれた。その後、彼は私の髪を指でつつきながら、カットの力加減と方向を判断しているようだった。着席から店長との会話が始まるまで、それほど時間はかからなかった。


台南西区:美樂士理髮廳

地元のグルメを共有してくれたり、近隣の観光地を紹介してくれたりと、熱量のこもった情報共有をしてくれるところも、同じく伝統的な美容室の特徴だ。過去に台南の青年路にある美容室で同じような経験をしたことがある。「美樂士理髮廳」という名の美容室で、青い木製パネルと斜めがかったガラスのコンビのクラシックなスタイルでありながら、非常に斬新なデザインだった。当時はたまたま通りかかったときに気づき、その場で髪を触ってみて、中に入って様子を見ることにした。

こちらの美容室は同じく夫婦で経営しているが、会話の中に現地の紹介があまり含まれていないのが、唯一の違いだ。髪を切っている途中で、店長が澎湖出身であることを知った。彼はすぐに後ろを振り返り、引き出しから澎湖の大きな地図を取り出し、澎湖の観光スポットを指差しながら、そこでの生活を紹介してくれた。「これらは全部、台南にはないんですよ」と自信満々に言っていたのを覚えている。

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その時に店長の口から澎湖にある数多くのビーチや、サボテンアイス、𩵚魠魚(サワラ)などを紹介され、より澎湖のことを詳しく知った。ヘアカットを通して、間接的に別の場所の風景を知ることができたとも言える。彼が髪を切り終わった後、奥さんに交代して髪を洗ってもらった。台南は十分暖かいにも関わらず、夫婦が同じ屋根の下で美容室を営んでいることで、へアカット自体がまた一段と温かみに包まれている。


苗栗白沙屯:菲凡髮型坊

美容室に関して、他にも忘れられない思い出がある。2年前のある日、純粋に旅行がしたいという衝動に駆られ、ほとんど聞いたこともない苗栗県に向かい、偶然、白沙屯にたどり着いた。地元の駅の外にフリーのシェアサイクルステーションがあり、その日、私は無料の自転車で素晴らしい海岸線に沿って走り、好望角の驚くほど素晴らしい景色を見るまで止まらなかった。

旅先で思いがけず美しい風景を発見した際は、いつも我慢できない興奮に駆られる。その時、何か記念になることをしなければと思い、2年間伸ばし続けた長い髪を現地の美容室で切ることに決めた。そこで私は「菲凡髮型坊」に入り、地元のおばさんが何人か集まって見守っている中で、店長の奥さんが私のポニーテールをバッサリ切るのを見ていた。

その後、同じく店長の奥さんとの会話を通じて、近くに夕日を見るのに絶好のスポットがあることを知った。そこで、髪型を変えた後、すぐに彼女が説明した穴場に向かい、夕暮れ時に確かに人生で最も印象的な夕日の一つを思い出に残すことができた。当時の体験がきっかけで、その後、色々な県や市に髪を切りに行くようになったのだ。

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頭城の美容院には「とある関係」が存在することが判明した

頭城に帰ってから、会話が盛り上がっているのをチャンスとばかり、私は店長にその日、疑問に思っていたことをやっと口にした。「兄さん、どうして頭城にはこんなに美容室があるの?」

聞いてみると、開蘭路にある別の美容室の店長は彼の元弟子で、さらに別の弟子が別の通りで自分の美容室を経営していることが分かった。彼の話によると、頭城にある多くの美容室は、師匠と弟子、家族同士や友人同士など、何らかの関係を持っているそうだ。

しかし、頭城老街という狭い地域に、両手の指で数えられないほど多くの美容室があるのは、なぜなのか? 店長は答えをくれていない。

雅方理髮廳を出た後、再び頭城の街を歩き回った。店長の話を聞いてから、目の前の景色に対してまた違う解釈を抱いた。頭城にある数多くの美容室は、烏石漁港が貿易港であった時代から残された遺産なのか?それとも、海岸に近い位置にあるため、潮風が多く吹くことで髪が早く伸びるのか?街を離れた後でも、これらの疑問は私の頭の中で繰り返されていた。
 

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後日、関連情報を調べてみようとしたら、偶然にもフェイスブックのファンページ、「頭城二三事(頭城のあれこれ)」を見つけた。このファンページでは、頻繁に街の色々な情報が不定期で更新されている。その中に、とある美容室の開店についての投稿があり、「100円ヘアカット開店!ここもヘアカットのトップレベルな戦場だ!」との記載があった。さらに面白いのは、コメント欄に「あそこも45年前は美容室だったのだ…」 。このことから、美容室は頭城において、一般的な存在ではないことが分かる。


 

その土地を知る最も直接的な方法は美容室に行くことだ

疑問は解消されなかったが、ヘアカットをきっかけに旅先でその土地の素敵なエピソードに出会うことがよくある。宜蘭頭城、苗栗白沙屯、台南西区のほか、雲林北港、屏東恒春でも忘れられない収穫があったが、原稿長さの都合上、割愛させていただく。

計画なしの旅でサプライズを発見したときの楽しみは、順番にスポットをたどるよりもずっと満足度が高く、刺激のあるものだ。ガイドがあふれている時代だからこそ、自分だけのオリジナルガイドを作ることに深い意味がある。1992年に出版された「深夜特急」でも、沢木耕太郎氏は「計画を決めて、それに沿って行動をするのならば、こんな旅は必要ない」と、同じようなことを述べている。

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1つの土地を知るには、方法が1つ以上あるはずだ。しかし、今日からは、「その土地を知るには、まずその土地の美容室に足を踏み入れることから始めよ」と言ってもいいかもしれない。 でも、どうせ行くなら、伝統的な美容室に行くことを忘れないで。


 

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