注目ポイント
台湾の音楽シーンを追っているラジオDJ&コーディネーターの竹内将子さんの連載。今回取り上げるのは、村上春樹さんの小説のタイトルを店名にした「海邊的卡夫卡」(海辺のカフカ)。ライブスペースのあるブックカフェとして感度の高い若者たちを中心に支持され、星野源さんがミニライブを行った場所でもありますが、今年の夏、台北市内の学生街から高雄市の音楽ホールに移転。竹内さんはその移転にあたって、どうしても気になることがあるようです。
いつになったら台湾へ?と思いつづけた、その渡航が可能になった。
この3年間に、次に台湾に行ったらどこに行こうか?何をしようか?何を食べようか?と妄想しては消えてを何度も繰り返してきた。
YouBikeで台北市内を走り抜けて、あの火鍋のお店にまた行ってみたい、あれこれ気になっていたお店を巡ってみたいなとか、以前に舒米恩主催のフェスを見るために訪れた台東にも再び行ってみたいなとか、次はこれまで行ったことのない離島にも行って見たいなと夢は広がるばかりだった。
担当するPodcast番組「好玩電台」で漫画家でイラストレーターの高姸さんにインタビューする機会があり(好玩電台#25)、その際、漫画『緑の歌』の中にも出てくる台北の公館にあったカフェでライブハウス・海邊的卡夫卡(海辺のカフカ)の話になった。その話題の主題はスイーツの「酸甜檸檬塔(レモンタルト)」。
どこにでもありそうだけど、でも、私にとってどこにでもない特別な存在(!)。

海辺のカフカというと、地元のカルチャー好きな人が集まるお店。これまで説明不要なほど沢山のライブが行われてきたし、星野源さんが台北ではじめてライブを行った場所、そして、2回目の台北公演の際にも別の場所でライブを行った後、こっそりとお忍びでカフカを訪れたとも言われている。

コロナ禍になる前、私が最後にお店に伺った時には一緒に訪れた友人3人揃ってレモンタルトを食べ、ティーポットにたっぷり入った温かい紅茶を飲みながら星野源話に花を咲かせていたら、店内のBGMが急に星野源の曲になり、お会計の時には貴重な(?)星野源ミニステッカーをお釣りと一緒にさりげなく渡してくれたという出来事が(笑)。なんとも愛すべきお店であり店員さん!

その長く愛されていた台北の公館から、高雄流行音楽中心(高流)へとお店は移転することに。もちろんまだ行ったことはない。気になる気持ちを抑えきれない私はお店にメール連絡をしてみた(笑)。「あの、高雄のカフカのデザートメニューにレモンタルトはありますか?」
すぐに返信があった。「有的!(あるよ!)」
海辺のカフカのオーナーは、バンド1976樂團のボーカル・阿凱さんこと陳瑞凱さん!

1976樂團と言えば、「方向感」が好きで思い出しては時々聴いている。
1976樂團「方向感」(所属レーベル・相知音樂のYouTubeチャンネルより)
海辺のカフカのレモンタルトがなぜ特別なのか。それは、カフェの雰囲気とカルチャー好きが集う独特の空気感とライブ空間。なによりレモンの酸っぱさ、そしてなぜか木のフォークと共に提供され、タルト生地が本当に固くて割った瞬間にお皿から飛び出してしまいそうに、いや実際に飛び出してしまうんだけど(笑)。そんなところも含めて、そのすべてが愛おしいレモンタルトなのだ!
