2022-11-09 政治・国際

兵力の消耗激しいロシアは元服役囚を招集 露民間軍事会社「ワグネル」は受刑者も募集

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注目ポイント

ロシアのショイグ国防相は10月末、部分動員令に基づく予備役30万人の招集が完了し、うち8万2000人がウクライナの前線に送られたとプーチン大統領に報告した。だが、ウクライナ軍の猛攻により、南部ヘルソン州ではわずか1日でロシア兵950人が死亡し、東部ルハンシク州でも1個大隊500人以上がほぼ全滅したと報じられた。兵力の消耗が確実に加速し、焦りを隠せなくなったプーチン氏は、元服役囚の招集も決めた。

英BBCによると、ロシアは殺人や麻薬取引の重罪で服役し、刑期を終えて出所した元服役囚を部分招集に含むことを可能にするため、法を一部改正したと伝えた。ただし、未成年への性的虐待やテロ行為で服役していた元囚人たちは含まれていないという。

さらに、国連の「ウクライナに関する独立国際調査委員会」が9月にまとめた報告書によると、「プーチンの私兵」と呼ばれるロシアの民間軍事会社「ワグネル・グループ」が、服役囚を対象に減刑を条件に入隊の募集を始めたという。

BBCによると、ロシアでは兵役により服役囚が減刑されるという法律は存在しないが、ワグネル・グループの指導者エフゲニー・プリゴジン氏が、服役囚らに向かって同グループで兵役を完了した者は、「もう刑務所に戻る必要はない」と演説している様子が映像に収められているという。

そのワグネルは先週、ロシア国内としては初めての本部をサンクトペテルブルグに開設した。プリゴジン氏はプーチン氏と懇意のオリガルヒ(新興財閥)。5000人以上とされるワグネル社員のうち2000人は戦闘要員で、軍や警察出身者以外にも、親ロシア・チェチェン共和国の元民兵や、ネオナチなど元囚人も含まれているという。

プーチン氏は、9月の部分動員令が発令されて以来、30万人の志願者のうち約4万9000人がウクライナの前線に配備されたとし、政府による入隊キャンペーンで5万人の若者たちが新たに志願したと発表した。

だが、西側やウクライナの軍専門家は、志願兵を集めた〝にわか部隊〟を戦地に送るという意思決定はすでに失敗していると分析。英国国防省広報官は先日、前線のロシア軍兵士は必要な訓練を受けておらず、まともな装備さえないと指摘。「9月時点でロシア将校らは、新たに招集された予備役兵らが武器も持たず、前線に到着することを懸念していた」と明かした。

ロシアの独立系ジャーナリストが設立したメディア「ノーバヤ・ガゼータ欧州」は先週、ロシアが部分招集でウクライナに配備した100人以上が既に死亡したと報道。そのうち23人は、前線への投入前に自殺したり、アルコールや薬物などが原因で命を落としたとしている。

ノーバヤ・ガゼータ欧州は、遺族への死亡通知などに基づき、独自に集計した結果と説明。戦場で遺体が確認できない場合は行方不明として扱われるケースが多く、実際の死者数はさらに多いとみられる。

英紙デーリー・メールによると、ウクライナ軍は先月30日、南部ヘルソン州で攻勢を強め、ロシアに併合された地域の奪還のために猛攻を仕掛け、1日でロシア兵950人が死亡したと伝えた。

また、ロシアの複数の独立系メディアは、部分動員で東部ルハンシク州に派遣された1個大隊570人のうち500人以上が死亡し、大隊がほぼ全滅したと報じた。報道によると、この部隊はロシア中部ボロネジ州の予備役らで編成され、今月1日に前線近くに投入されたという。兵士らは塹壕を掘るように命じられたものの、スコップが30人ほどに1個しか用意されず、素手で掘っていたところをウクライナ軍の砲撃を受けたという。

メール紙などによると、ウクライナ軍は先月末時点で、ロシア軍の戦死者は侵攻開始以来少なくとも7万1200人に達したとしている。

部分動員令に対するロシア国内の反発は大きく、すでに70万人以上が近隣諸国に出国したとの見方もある。ロシア独立系メディア「メドゥーザ」は、中部チュワシ共和国では、約束された報酬が支払われなかったとして動員兵約100人が集団で抗議したと伝えた。


 

 


 

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