2022-11-20 ライフ

連載「あの街の“正港台湾料理店”」第7回:台味弁当(東京都武蔵野市)

注目ポイント

正港とは「正統な、本場の」などを意味する台湾語。「あの街の“正港台湾料理店”」は、日本で台湾の食文化にこだわる料理人のストーリーと食を追い求める連載です。第7回目は、三鷹の閑静な住宅街にある台中出身の林(リン)さんご夫婦が営む「台味弁当」を紹介します。

「台味弁当」は、三鷹駅から徒歩で14分ほどの、まさに住宅街の一角にあるテイクアウト主体の台湾料理店だ。戸建てやマンションが立ち並ぶ住宅エリアにあって、「何の店だろう」と一瞬で目が止まり、どこか興味がそそられる店構えである。そういった意味で、お店のコンセプトも、マーケティングも周囲の住民を中心に考えられた独自の店舗スタイルだ。

店内は広いキッチンを主体にスペースをうまく使い、大同電鍋、雑貨、お菓子、缶ドリンクなど、台湾グッズがディスプレイされた待機エリアと、店内でも飲食が可能なカウンターエリアとで構成されており、シンプルながらもプチ台湾体験ができる心地よい空間だ。

壁のあちこちにも台湾イメージのディスプレイがあり、出来上がりを待つ時間も楽しめる。

元々飲食店を始めたかったと語る店主の林さんは、留学で日本を訪れ、その後は日本の企業で働きながら、事業展開について奥様と様々な構想を練っていったのだという。そして準備を重ね、弁当店としてスターを切ったのが2020年5月である。

折しもコロナ禍が世の中の不安を煽り、緊急事態宣言の発出など、外出にも様々な制限がかかるタイミングであったが、住宅地の弁当店というスタイルが功奏し、目新しさもあってか近所の方を中心にお客様が次々と来店してくれたという。「他の料理に食べ飽きていた時期だったからかもしれない」と謙遜しながらも、一度来店された方が再びこの味を求めて足繁く通ってくれるようになり、着実に常連客が増えていったという。

黒と赤を基調とした台湾カラーの外観で、街並みにもフィットした洗練されたイメージがある。

お店で提供するのは、魯肉飯(ルーローハン)と雞絲飯(ジースーハン)の2品直球勝負だ。「我々台湾人が食べたらすぐに違いが分かる」という自慢のレシピはすべて奥様の手作りだ。日本人の好みも意識しながら、林さんご夫婦が幼い頃から慣れ親しんだ、まさに店名通りの「台味」を追求している。イートインは2021年11月から始めたとのことで、ゆったりと間隔を取ったカウンターで出来立ての料理を味わうこともでき、店内飲食の場合はデザートとして緑豆湯(リュートウタン)もセットされる。

テイクアウトの他に、3席分あるカウンターでは、出来立ての料理を味わうことができる。

料理はすべて注文を受けてから調理され、つけ合わせの野菜炒めも卵焼きもアツアツのまま提供される。メインの魯肉飯や雞絲飯の味が絶品なのはもちろんのこと、炒め野菜の絶妙なシャキシャキ感も抜群のコンビネーションで、半熟の卵焼きをゴハンと混ぜ合わせて食べると、何ともまろやかでコクのある新たな世界が口の中に広がる。お店も開店から3年目となり「今ではわざわざ遠くからもたくさんのお客様が来てくれる」というその言葉もまさに納得の味である。

シャキシャキの炒め野菜と、半熟の卵焼きの組み合わせは、ここならではの独自のコンビネーションだ。
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