注目ポイント
本調査が開始された10月6日では、全国のコロナウイルス新規感染者数は約 3万3千人/日となっており、一時は26万人/日を超え、第7波ピークの8月から急速 に収束に向かっている。ウィズコロナ下において、政府主導の観光産業復興に向け た動きに加え、足元で進む急速な円安とウクライナ危機による資源価格高騰の中、 国民の現在の認識、景況感、消費意欲には、前回調査時点と比べどのような変化が 見られるだろうか。 本レポートでは、現状に対する実感、コロナウイルスの深刻度、消費財に対す る予算の変化について年代・カテゴリー別にアンケート調査を行い、コロナワクチ ンの接種状況にも注視した上、日本の一般消費者が現状をどのように感じている かについて考察した結果をまとめる。
この記事はEngagement labの許可を得て掲載しています,元記事のリンクはこちらです。
第7波が沈静化する中でも、現状に対する悲観ムードは根強く続いている
過去1年間の日本の状況に関する実感では、依然として半数以上の人が「悪化している」と認識しており、また、今後1年間の展望に関しても、「悪化する」と悲観的に考えている人は、先月と同様、半数近くを占めている。急速な円安やウクラ イナ危機による資源価格高騰を受け、光熱費や日ごろの食材の値上げなど、生活費の上昇が家計を圧迫しているため、コロナ禍が沈静化しているものの、現状に関 する実感では悲観的な空気が蔓延している様子が伺える。

日本国民のコロナウィルスに対する深刻度は楽観・悲観の割合が拮抗
新型コロナウイルスの現状について、「非常に危険だ」と感じている人(T3B)は、先月調査より11ポイント減少し、非常に深刻に捉えている人は全体の2割となった。一方、「それほど深刻ではない」と感じている人(B3B)も9ポイント増加し、全体の約2割となり、楽観、悲観の割合がほぼ均衡する形となった。「第7波」の感染収束が進み、コロナウィルスに対する認識は明らかに好転している模様だ。

全体を通して予算の減少、消費意欲の減退がみられる今後1か月の支出予算
今後1ヵ月間の消費支出予想では、16%が消費の増加、26%が減少を見込んでおり、依然として、予算の減少を想定している人の方が多く、先月と比較しても、消費意欲はやや減退している。この傾向は、特に50-60歳の年代で顕著となっている。
商品カテゴリー別にみると、先月と比較して、16-29歳の若い世代で、特に「旅行」に対する支出の減少が目立っているが、30歳以上の世代では、旅行への支出増額を予定している人の割合が増加となった。しかしながら、「旅行」や「外食/娯楽」を手控える傾向には変わりがなく、「家庭用品」への支出では8割以上の人が変化なしとの回答となった。

第7波の感染収束が進む中、政府による、外国人旅行客の回復を目指した訪日観光産業の復興に向けた動きに加え、国内旅行の観光需要喚起策として、10月10日までは近隣県のみが割引対象だった「県民割」を、対象を全国に拡大した「全国旅行支援(全国旅行割)」も、10月11日より開始予定となっている。
今回のアンケート結果から、日本国民のコロナウィルスに対する深刻度は、楽観と悲観の割合がほぼ均衡するなど、若干の改善が見られる。しかし、日本の現状に対する認識では、過去1年間の実感、今後1年間の展望ともに、依然として半数以上の人が「悪化している/悪化する」と悲観的に考えている。今後1ヵ月間の消費支出予想でも、依然として予算の減少を想定している人の割合が高く、商品カテゴリー別にみても、消費意欲は全体を通して先月よりもやや減退しており、物価高の影響やウクライナ危機が心情面に及ぼしている影響が伺える。こうした状況の中で、各種業界における事業の意思決定者には、日本の一般消費者の心情の変化を踏まえ、事業計画の策定をしていくことが望まれる。