2022-11-09 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第8回:台湾情勢がヤバすぎて身動きが取れない件で

注目ポイント

中国共産党の習近平総書記が率いる3期目の指導部が発足。異例の長期政権で独裁色が強まるなか、11月中旬に東南アジアで開かれる国際会議に合わせて、岸田文雄首相が習氏との首脳会談を行う方向で調整に入ったと報道されました。台湾をめぐる問題が大きな焦点になる会談の行方は? 山本一郎さんの月イチ連載です。

異例の3期15年の経緯

もう日本でも台湾でもさんざん既報ですが、中国で習近平さんが「異例」の国家主席3期目15年とかいう大変な決定を下し、また、指導部を全員自身より若い側近で固めるという権力強化の方向で話が進みました。

見ようによっては、習近平さんはその手法は別として安定した優秀な指導者ではあるので、偶発的な不測の事態はあまり起きないと考えられる面はあります。反腐敗運動をはじめとした政府・共産党組織内の引き締めや、軍備増強やゼロコロナ対策、中国製造2025など、中国が手がけようとしている習近平路線というのは案外整然としています。賛否両論ありますが、経済政策においては共同富裕に向けて邁進していて良くも悪くも一貫はしていて、場当たり的に何かとんでもないことをするという要素が少ないようにも見受けられます。もちろん、中国経済の繁栄をもっと謳歌したい人たちからすれば困るわけですが。権力を掌握している、さらに確立しようとしているのは間違いないにせよ、単に威張りたいとか、権力者としての安心を目指しているというよりは、明確に習近平さんがしたいことを見定めたうえで手を打った結果がこれである、と見るほうが正しいのかもしれません。

ただ、権力者として優秀だから独裁していいよ、優秀なので安心だとはならず、また、習近平さんの3期15年は、経緯があります。本稿でも何度も指摘しております通り、新疆ウイグル自治区やチベットなどの少数民族に対する非人道的な弾圧や、香港への対処など問題は尽きません。もともと文化大革命など大変な厄災になってしまった毛沢東さんの、その個人崇拝が結果として多くの中国人の命を奪うことになり、また、これを基点として長く中国は経済的にも威信的にも低迷をして来ました。それではいかんということで、一度失脚ののち復権した鄧小平さんが中国共産党の党規約に盛り込む形で2期10年を最大とし、あくまで個人崇拝のない形での中華指導部を実現するぞということで頑張ったのが経緯です

それを正面から突破して習近平さんが3年15年の国家主席任期にしたうえで自分が座るのもまた、人が決めたルールは人が破るという話でもあり、他方、習近平さんの話の流れ的には厄介なことに「台湾統一をするためには2年10年という任期では足りない」という大前提で5年延長した経緯がありました。台湾の人たちからすれば「え、なに言ってんの」という感じですが、外交筋にも中南海からそのような話で流れてきておりますので、たぶん中国側も本気であろうし、そうであるからこそ台湾有事が喫緊問題として東アジアの安全保障では注目されるのは間違いありません。なんてったって、習近平体制であるうちに、何らかの形で台湾統一はやるぞ、という意味でしかありませんからね。

 
首脳会談、台湾情勢をめぐる駆け引きは
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