2022-11-07 政治・国際

中国人工作員が米国の中間選挙で世論誘導 25万件超の情報操作狙ったツイートを特定

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

続投が決まった中国の習近平国家主席にとって、直近の課題は米国で行われる8日投票の中間選挙にどう影響を与えるかだ。米国の有権者に不満の種をまくという中国の工作活動は、独裁国家体制を「人類の新たな選択」として推し進める習氏の目的の一環だ。米政治専門誌「フォーリン・ポリシー」は、民主主義の根底を成す選挙という重要なプロセスへの中国による干渉の脅威に対応するため、米国や西側諸国は早急に対応する必要があると訴える。

フォーリン・ポリシー誌によると、8日に迫った中間選挙の投票日を前に、有権者の投票を思いとどまらせ、選挙プロセスの信用を失墜させ、国民を分裂させようとする中国政府系のサイバー工作員による活動が活発化している。

米サイバーセキュリティ企業マンディアントによると、「ドラゴンブリッジ」というコードネームを持つ中国のハッカーグループは、米国の有権者に投票行動の有効性に疑問を投げかけ、「効果がなく無力な政治システムを根絶するための方法」として、「内戦」の有効性を強調する英語のビデオをSNSやブログに投稿。警察当局に対する攻撃や政治的暴力も示唆した。

それとは別にツイッター社は10月下旬、中国を拠点とするユーザーによる同プラットフォーム上での工作活動をしていたと発表した。それには2000以上のユーザーアカウントによる、2020年の米大統領選をめぐるウソの不正暴露や、トランスジェンダーコミュニティへのヘイトスピーチなど、25万件を超える情報操作を狙ったツイートが含まれていた。

また、米サイバーセキュリティ企業レコーデッド・フューチャーは、中国政府が支援する別のSNSを使った工作活動を特定。その活動目的も米国の有権者を分裂させることで、人種問題、警察による残虐行為、ウクライナへの米軍の支援など、民意が分かれるような話題を取り上げ、有権者の感情を操作することを試みたという。

ツイッター社同様、9月にはフェイスブックとインスタグラムを運営するメタ・プラットフォームズ社(通称メタ)は、民主党と共和党、それぞれの支持者を標的とする中国発の偽アカウントを発見。これらのアカウントには、民主党のバイデン大統領が腐敗まみれだと主張するものもあれば、人工妊娠中絶反対や銃を所有する権利を訴える共和党を批判し、特に保守派のマルコ・ルビオ上院議員をやり玉に挙げるものもあった。

米連邦捜査局(FBI)は、中国政府系ハッカーが民主、共和両党のさまざまなインターネットドメインを集中的にスキャンし、ハッキング可能な脆弱なシステムを物色していると警告した。

フォーリン・ポリシー誌は、「これらの選挙前の世論操作は、単発で発生しているわけではなく、無視できる素人レベルの一過性のものでもない」と指摘。実際、そうした活動は、習氏が強調する中国で〝論破力〟と呼ぶものを反映しているという。それは中国の専制政治と西側の民主主義というぶつかり合う2つのビジョンを比較、対比し、一貫して中国に有利な方法で世論を誘導することにより、世界の流れを変えようとする動きだとしている。

同誌によると、論破力は個人や集団の行動に影響を与えて、中国の戦術的または戦略的目標を支持するよう仕向けるという。その究極の目標は、中国当局の意図に抵抗しようとする敵国の集団的意思を弱体化させることだ。そのための手段が、社会を分裂させる種をまき国への信頼を損なわせ、相反する社会的主張を利用し、集団内の特定のグループを過激化することだという。これらの手口は最近のサイバー工作からも明らかだという。

だが、中国の標的は米国だけではない。英国のトラス前首相が突然の辞任を発表してから数時間後、中国共産党系の環球時報は、英国の政治的混乱は西側の民主主義が「新しい問題を解決できない」ことを示していると大々的に主張した。

中国はまた、西側諸国の新型コロナウイルスの感染拡大への対応を「混乱」として流布。一方、中国政府は大規模な監視と都市封鎖を実施し、その優れた統治モデルにより、パンデミックに対して「戦略的勝利」を達成したと自賛。そうしたプロパガンダが中国や海外のプラットフォームを通じて発信され、その管理能力に対して好意的な見方が著しく増加したというのだ。

同誌は、米国の中間選挙に関しては、中国の干渉が選挙日の8日でストップする可能性は低く、実際は正反対だとみる。投票が締め切られた後、悪意のあるサイバー工作員と中国の国営メディアが、投票の不正や選挙結果に関する工作活動を活発化させることはほぼ確実だというのだ。その狙いは、特定の政党をおとしめることではなく、民主主義の信頼性を傷つけ、多元的で非全体主義的な社会に内在する文化的な亀裂を増幅させることだと指摘する。

そんな工作活動を見つけ出すことは、主に自由世界に本社を置くIT企業による貢献のおかげで、容易になっている。だが、いったん傷つけられた米国の民主主義体制への長期的なダメージを回復させることは困難だ。さらに悪いことに、中国はほぼ確実に今後数年間で同じ戦略を他の西側緒国でも展開するとフォーリン・ポリシー誌は断言する。

そのため、民主国家は中国の戦略に対応し、最終的に無力化するために、選挙資金の近代化、中国による干渉の監視強化、スパイ法を強化し、中国のために行動している可能性のある個人や団体を可視化し、開示要件を高めるなど、民主的な制度の強化が急務だと同誌は訴える。

何よりも、民主主義国家の指導者は、選挙への干渉がいつまでも許されるわけではないことを中国政府に知らしめることが重要で、インドネシア・バリ島で15日から2日間開催されるG2サミットは、西側首脳が習氏にそのことを伝えるのには最適な機会となると提案した。


 


 

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