2022-11-02 ライフ

「蚊に刺されやすい人」の科学的根拠が判明 特定の体臭発する人たちが蚊を引き寄せる

注目ポイント

「なぜ蚊に刺されやすい人がいるのか?」--これは長年の謎だったが、米ニューヨーク・ロックフェラー大学の研究チームはこのほど、一定の人たちが皮膚から発する、ある種の体臭が蚊を引き寄せるという新たな事実を突き止めた。

ロックフェラー大学の研究チームは、蚊を引き寄せる人たちが、匂いに結びつく特定の化学物質を皮膚で大量に分泌していることを発見。ただ最悪なのは、「蚊にとって、このお気に入りの匂いはずっと変化しないこと」だとし、蚊に刺されやすい人はいつも蚊に刺されっぱなしになることを示唆した。

研究論文をまとめたロックフェラー大学の神経生物学者レスリー・ヴォッシャル氏は、「皮膚にこの物質が高レベルで付着していると、ピクニックに行ったときに刺されてしまうことになる」と説明した。

これまでは血液型や血糖値、ガーリックやバナナの摂取、女性や子供など、誰がより多く刺されるかについてさまざまな説があったが、どれも確かな科学的根拠はなかった。そこで、匂いに注目した同研究チームは、人それぞれの体臭を比較する実験を試みた。

研究チームは、64人のボランティアに協力してもらい、皮膚の匂いのサンプルを収集するため1日6時間、前腕部にナイロン製のストッキングを装着したまま生活してもらった。その後、人の匂いがしみ込んだストッキングを容器に入れ、そこに数十匹の蚊を放った。すると、「蚊は最も好みの匂いのするサンプルに群がり、結果はすぐに明らかになった」と研究チームのマリア・エレナ・デ・オバルディア氏は語った。

さらに研究チームは、64個のサンプルの総当り戦を行い、最終的に最も多く蚊を集めたサンプルは、最下位よりも約100倍も多くの蚊を引き寄せたことも分かった。

研究チームは、蚊が何を区別しているかを解明するため、被験者の皮膚上の分子化合物を調べた。その結果、蚊を多く引き寄せた皮脂に多く含まれる50種類の化合物を特定。中でもカルボン酸の分泌が極めて多いことが分かった。

有機酸の一種であるカルボン酸は、人の体の全身の皮膚に存在。この「脂っぽい分子」は、皮膚の自然な保湿層の一部で、人によって分泌量が異なる。皮膚に付着した健康な皮膚バクテリアがこれらの酸を食べ尽くし、皮膚から体臭を生成する。ヴォッシャル氏によると、皮膚を傷つけることなく、これらの酸を取り除くことはできないという。

他の動物はカルボン酸を分泌しないため、蚊にとっては人間の居場所を突き止める大切な〝目印〟になっているようだ。

蚊が人間を狙うのは、採餌(吸血)のためだけではなさそうだ。人間が生活する場所の近くには清潔な水があることを知っている蚊は、血を吸った後、すぐに繁殖場である水辺へ移動できることも本能的に分かっているのではないかと研究チームは推測する。

一方、この実験では黄熱病、ジカ熱、デング熱などの病気を媒介するネッタイシマカを使った。ヴォッシャル氏は他の種類でも同様の結果が得られると期待しているが、確認するにはさらに実験と研究が必要だと述べた。

米フロリダ国際大学の神経遺伝学者マット・デジェナロ氏は、同じ人たちを複数年にわたって実験した結果、やはり刺されやすい人と刺されにくい人には大きな差があったと指摘。同氏は、「蚊を引き付ける人は、ずっと蚊を引き付けたままだった」ことも明らかにした。

一方、米ワシントン大学の神経生物学者ジェフ・リッフェル氏は、この研究が蚊を撃退する新たな方法を見つけるのに役立つ可能性があると指摘する。皮膚のバクテリアを操作することで、匂いを変える方法があるかもしれないというのだ。

それでも、蚊の撃退は容易ではないということを、この研究は証明している。研究チームは、嗅覚を損なうように遺伝子操作した蚊を使った実験も行ったが、やはり特定の匂いのする人に群がったという。

「蚊には回復力がある」とヴォッシャル氏は説明。「蚊はわれわれを見つけて刺すために、あの手この手を持っている」と結んだ。


 


 

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