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中国の〝秘密警察〟が、世界中でネットワークを拡大している。海外に逃亡したとされる23万人の中国人容疑者を帰国させるためなどとして、中国当局は各国で〝警察署〟を無断で設置。そんな活動拠点が国内に2か所あることが判明したオランダは、「不法な活動」だとして、中国を非難している。
オランダのRTLニュースは先週、「中国がオランダで違法な警察署を展開、威嚇の誇示」との見出しで特集記事を掲載。RLTなどの取材で、2018年から中国当局はオランダ国内で、「海外サービスステーション」という名の違法な〝警察署〟を設置していることを突き止めた。
表向きには、在オランダの中国人らに運転免許証の更新や、市民権取得など法的地位の変更などのため、行政サービスを提供しているという。だが、その裏では亡命した反政府主義の中国人を捜し出し、彼らの言論を封じる狙いもあるというのだ。
RTLニュースによると、ソーシャルメディアで中国政府を批判したため、逮捕されることを恐れてオランダに亡命したワン・ジンユーさんは、過去3年間にわたり中国の秘密警察から追われていると告白。ロッテルダムにある中国の〝警察署〟からは、今年になって直接電話がかかってきたというのだ。
オランダ外務省は「そのような組織は違法」だとし、「具体的にどういった活動をしているのか調査し、適切な措置を取る」との声明を発表し、中国の不法行為を非難した。
ライデン大学で諜報活動を研究するウィレミン・アーツ氏は、「わが国では、そうした活動をするには政府の許可が必要だ」と指摘。パスポートの更新など、海外在住の自国民への行政サービスは大使館や領事館が行うもので、そのことは外交上のルールとして、オランダや中国も批准している外交関係に関するウィーン条約にも示されていると述べた。
RLTニュースなどによると、オランダ政府には〝警察署〟の設置について、中国側からは何も知らされていなかったという。
中国の海外〝警察署〟は2018年6月、浙江省麗水市の警察が、世界で初めてアムステルダムに設置し、以来、同様の施設は少なくとも世界各地の46都市で確認されているという。RLTによると、アムステルダムは中国で警察官経験がある男たち2人を中心に運営し、ロッテルダムは福建省福州市出身の元人民解放軍兵士が目立たない民家で管理している。
中国当局が製作した公式PR動画によると、福州市でのインターネットを使った詐欺事件が多発し、その犯行は海外在住の中国人によるもので、彼らを検挙するため、同市の捜査当局がロッテルダムを始め、バルセロナやニューヨークなど少なくとも21か国30都市に〝警察署〟を設置したというのだ。
オランダに亡命したワンさんによると、ロッテルダムにある中国の〝警察署〟から電話があったのは今年初め。電話主はワンさんに「中国に帰国して問題を解決するよう迫り、親のことを考えろ」と告げたという。その後、ロッテルダムの〝警察署〟の電話番号から、汚い文言の脅迫メッセージが届いたという。