注目ポイント
「貢丸湯」は新北市の歴史ある建物やレジャーを紹介する雑誌である。そんな「貢丸湯」を発行する「見域工作室」は、清華大学(新竹市)の異なる学部の学生が一緒になって互いを刺激し合う「清華学院」(現厚徳書院)の仲間たちによって設立された。このプロジェクトの中心となって動いた呉君薇さん。設立までのストーリーや雑誌に込めた思いとは。。
雑誌を出版して以降は、雑誌以外のその他の形でも新竹の物語を紹介してほしいとの声も寄せられた。市内の各小学校の課外学習でガイドツアーを行ったり、文化資産や古跡の委託事業を請け負ったりしたこともある。呉さんは、「地域を見てもらう」という要素に合致したプロジェクトを選んで進めているのだと明かした。

▽ デザインはパソコンの前で資料を集めるだけではできない
「私たちには『歯向かっていく』という視点があります」と呉さんは語る。「みんなと対話をしたいと考え、でもその対話は上から下への指導的なものではなくて、真に意思疎通をしようとする対話です。読者や市民が意見をフィードバックできる空間を用意して、出来上がるコンテンツを皆さんのニーズにより合ったものにしようとしています」
呉さんたちは、テーマを設けて話を聞くイベントを頻繁に開催し、読者の声をすくい上げると同時に、寄せられた意見を参考にテーマや内容を考えている。「第18期では交通関連のテーマを取り上げました。ワークショップを開いて新竹の交通に関心のある人々と共にさまざまな場所で交通ルール違反の現状を観察し、それらをまとめて特集の中の一つの章にしました」

中部・苗栗県の台湾原住民(先住民)族の集落と共同で、集落について紹介する小冊子を作ったこともある。かつての先住民族には文字がなく、歴史は口述または歌で伝え継がれていたため、呉さんらはチームを作って彼らの元を訪れ、物語を聞き、多くの写真やテキストコンテンツを集めた。その過程では集落の人々とコミュニケーションを重ね、出来上がった作品は集落の人々から高評価を得た。
誰かと一緒に何かを行う時、必ず現地に十分な時間滞在し、その地域全体の風合いを感じることにこだわっているのだと呉さんは強調する。「どうやってレイアウトを組むか。デザインはパソコンの前に座って他の人の資料を集めるだけではできません。そこにはより細やかな要素と感情があります。実際に現地で暮らして初めて、鍵となる素材やインスピレーションを獲得し、それを持ち帰ってきてデザインに取り入れることができるのです」
▽ 拡大印刷した記事が飲食店に
「貢丸湯」は創刊から8年になる。紙の出版物からすると、容易なことではない。「紙の出版物ということ自体が、対話をするターゲット層と関連してきます。私たちは最初から、対話の対象の多くが中高年であることをはっきりと分かっていました。彼らはデジタル機器にあまり詳しくなく、自分と関係のある物事が出版物で紹介されることをとても光栄に感じるのです」