2022-10-28 ライフ

文化+/新竹の古建築を救う活動から始まったー雑誌「貢丸湯」とその産地<文化+>

注目ポイント

「貢丸湯」は新北市の歴史ある建物やレジャーを紹介する雑誌である。そんな「貢丸湯」を発行する「見域工作室」は、清華大学(新竹市)の異なる学部の学生が一緒になって互いを刺激し合う「清華学院」(現厚徳書院)の仲間たちによって設立された。このプロジェクトの中心となって動いた呉君薇さん。設立までのストーリーや雑誌に込めた思いとは。。

 

▽ すぐそばにあるけれど温もりを与える「貢丸湯」精神

「見域」は日本の子供が遊ぶ「けん玉」から取った。2つの単語は中国語の発音が同じだ。「私たちがしたいのは『地域を見てもらう』ということです」。

呉さん(撮影:王騰毅)
呉さん(撮影:王騰毅)

呉さんは「地方創生」という言葉を出す。「今は当たり前の概念だと思われていますが、かつては『国際化が素晴らしい』『時代の流れに乗ってより進歩した観点を学ぶべきだ』と考えられていた時期もありました。でも、『ローカルなものほど国際化する』と主張する人もいます。これまで多くの地方には自分で発言する権力や、声を伝えるパイプがなかったように思います。私たちがしたいのは、地方の本質や、地方の人々が言いたいことを含め、地方を多くの人に知ってもらうということなのです。このような気配りを抱きながらこの雑誌に使命を与えています」

「貢丸湯」で伝えたいのは大衆の文化や庶民の文化なのだと呉さんは話す。「かつてはイベントや展覧会こそが文化だと思われていました。ですが私たちが着目しているのは、生活の中で見過ごしてしまいやすい、あるいは見慣れ過ぎて当たり前だと思っているけれども大切な時に温もりをくれる物事です」

「貢丸湯」はまさにこのような物だ。どこにでもあって、あって当たり前のようだが、外から来た人に温もりを与えてくれる。「これが最初にこの名前を雑誌に付けた最大の原因なのです」と呉さんは言う。

 

▽ 紙の雑誌を出版 ターゲットは中高年

雑誌づくりについては最初はみんな素人だった。創刊号では、論文のような文章を載せていたこともあった。「その後、他の人の雑誌を多く見て、誰もこんな風にはしていないと気付きました」と呉さんは笑う。

創刊号のテーマは「新竹へようこそ」。いろいろな背景を持つ人が集まっていることや悠久な歴史、豊かな文化、グルメなど、新竹の素晴らしさを包括的に紹介しようとした。

まずは1000冊を刷り、すぐに売り切れた。重版してもまた売り切れた。「嘘みたい」というのが呉さんたちの率直な感想だった。

同雑誌を読んだ新竹の上の世代の人が一気に100冊を買ってくれた。販売場所もネット書店や一般の書店ではなく、各地の個人書店を中心にした。台湾各地の人に見てもらいたいとの思いからだ。メンバーはマーケットについて詳しくなく、その上、人手が限られていることが多い個人書店は締めや精算も比較的ゆっくりしている。そのため、突如として代金が振り込まれ、「不意にお金を拾った」ような感覚になることもあると呉さんは話す。だが、個人書店は最初は露出の面で良い販売経路となった。

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