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ロシアは、ウクライナが放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」を使用する計画があると主張している。これに対し米国のバイデン大統領は、もしロシアが事実をねつ造し、「偽旛作戦」を実行すれば、「とても重大な間違いを犯すことになる」と強く警告した。その「汚い爆弾」とはどういうものなのか。
ロイター通信が伝えたロシア側の発表によると、米露両軍の制服組トップは24日、5月以来となる電話会談を行い、ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は、「ウクライナが『汚い爆弾』を使用する準備をしている」と主張。米軍のミリー統合参謀本部議長はそれを否定した。
米軍は声明で「安全保障に関する幾つかの懸念事項について話し合い、意思疎通の手段を確保しておくことで合意した」と明らかにしたが、詳しい内容は公開しなかった。
同通信によると、ウクライナのクレバ外相は25日、同国は「汚い爆弾」の開発を計画したことはないとし、ウクライナがこうした兵器の使用を計画しているとロシアが主張していることは、むしろロシアが攻撃を自作自演する「偽旗作戦」を計画しているように見えると述べ、警戒感を露わにした。
クレバ氏は、ウクライナが1994年に核兵器を保有しないと決定したと説明し、今後も核保有計画はないと強調。国際原子力機関(IAEA)の専門家が近くウクライナを訪問する際、政府は査察のための完全なアクセスを提供すると述べ、ロシアに対し同様の透明性を提供するよう呼びかけた。
これについてIAEAのグロッシ事務局長は、ウクライナの要請に応じ査察官を派遣すると発表。定期的に査察官が訪れている2つの原子力関連施設で査察を行うことを明らかにした。2つの施設がウクライナのどの施設なのかは明らかにしていない。
では、そもそも「汚い爆弾」とは何なのか?
米原子力規制委員会(NRC)の定義によると、「汚い爆弾」とは、「放射性物質飛散装置」(RDD)の一種で、「ダイナマイトなどの従来型の爆発物に、放射性物質を組み合わせたもの」としている。
また、「ほとんどのRDDは、殺傷能力や重大な疾患を引き起こすほどの放射線を放出することはなく、むしろ放射性物質よりも従来型の爆発物のほうが、より大きな人的被害をもたらす。だが、RDDが爆発すれば人々は恐怖でパニックに陥り、周囲の環境を汚染する。復興には放射性物質の除去など、多額のコストが必要になるおそれがある」としている。
また、「汚い爆弾」と核兵器の根本的な違いは、その破壊力だ。
米誌「ニューズウィーク」によると、核爆弾は「『汚い爆弾』に比べて数百万倍も強力な爆発」を引き起こす。「汚い爆弾」は、核爆弾や生物化学兵器のような大量破壊兵器とはみなされない。主な狙いが「汚染と不安」を引き起こす点にあることから、むしろ〝大量混乱兵器〟だという。