注目ポイント
国の経済力を表す指標であるGDP(国内総生産)を国民の総数で割った一人当たりのGDP(国内総生産)を見ると、台湾と日本には6000ドルほどの差がありますが、「日本のものは安い」と感じる台湾人が少なくないようです。物価が上がりすぎて賃金の上昇が追いつかない台湾、蔡英文総統は任期中に最低賃金を3万元まで引き上げることを目標にしています。
日本円が、歴史的な暴落を続けています。
今年に入ってから、円安の影響で海外からの仕入れ値が上がり、日本国内でも「物価が高騰している」といったニュースを見かけますが、それでも海外在住者にとって日本の物価は非常に安いと感じます。
私は現在台湾に住んでいるので、周囲には台湾人の友人や知り合いが多いのですが、皆こぞって「日本のものは安い」「今のうちに不動産を買っておこう」などと口にしています。
台湾と日本の平均収入は、今ではそれほど変わらなくなっていますが、それでも2021年で二カ国の一人当たりGDPには6000ドルほどの差があります。
それなのになぜ、台湾人は日本を「安い」と感じるのでしょうか?
ボロアパートでも億ション
実際に台湾に住んでみると、台湾で日本よりも安いものはほとんどありません。
生活に必要な「衣食住」を考えてみても、洋服はユニクロや無印など日本や海外のブランドが、現地の2割増しの値段で売られています。
食事も、100元(約450円)以下で食べられるものはほとんどなくなってきました。
住居に関しては、築50年のボロアパートの一室でも、台北市内などでは当たり前に億ションです。
戸建などもってのほか、建設前のマンションであっても、1坪40万元(約180万円)以下で購入できる物件などほとんどありません。さらに恐ろしいことに、これらの物価は常に上がり続けています。
賃金が物価の上昇に追いつかない「台湾」
現在台湾は、物価が上がりすぎて賃金の上昇が追いつかない状況に陥っています。
主計總處(内閣統計省にあたる)が2022年7月に公布した勤労統計調査によれば、1月から7月までの1人あたりの賃金は平均で4万4,286元と、昨年と比べると3.1%増加しました。
22年以来で最大の増加となりましたが、物価高騰に賃上げが追いつかず、実質賃金は0.07%減少となりました。
実質賃金が「マイナス」となったのは台湾では実に6年ぶりのため、「賃金が物価の上昇に追いついていない!」と国民の間では不満が出ています。

下がり続ける日本の賃金
2022年、6年ぶりに実質賃金がマイナスとなり国民の不満が爆発している台湾ですが、日本はどうでしょうか?
ご存じの通り、日本の実質賃金は20年間上がるどころかマイナスの一途を辿っています。
賃金は上がらず、でも物価はほんの少し、少しずつ、上がっている。
日本の物価上昇率が、この30年で各国の賃金上昇率よりも著しく低かったために、「日本は安い」と言われているのではないでしょうか。