注目ポイント
正港とは「正統な、本場の」などを意味する台湾語。「あの街の“正港台湾料理店”」は、日本で台湾の食文化にこだわる料理人のストーリーと食を追い求める連載です。第4回目は、台湾の高級茶専門店の運営に長年携わってきた洪藝庭(ホンイーティン)さんが、本場の茶藝館を日本でも再現すべく出店した「台湾席茶 蓮月庭」を紹介する。
自由が丘駅から徒歩4分ほどの閑静な住宅地の一角、森の小道を思わせる緑のアーチを抜けると、高原のテラスにトリップしたかのようなスペースが広がり、そこに「台湾席茶 蓮月庭」はある。赤と黒の彩りが印象的な入口ドアを開けると、木をふんだんに使ったインテリアを基調に台湾茶器が整然とディスプレイされ、まさに台湾の高級茶藝店を訪れたような空間が広がっている。

台湾出身の洪藝庭(ホンイーティン)さんが、ご主人の高橋浩二さんとの結婚を機に来日し、日本でも本場の台湾茶を楽しんでもらおうと開業した「台湾席茶 蓮月庭」では、手作りの高級台湾茶器で淹れた本格的な台湾茶を五感で楽しむことができ、日常を離れた、ゆったりとした豊かなひと時が味わえる。

蓮月庭で使用される茶葉は、台湾でもわずかしか採取されない厳選された無農薬台湾高山茶だ。台湾国内でも入手が困難な貴重な逸品なのだという。「席茶(シーチャ)」のスタイルで楽しむ台湾茶の一煎目は、洪さんはじめ専任のスタッフが、本格的な作法で丁寧に解説を加えながら点ててくれる。立ち上る湯気とともに豊かな香りが広がり、その何ともまろやかで深みのある味わいは、一瞬にして心身ともにリラックスさせてくれる。

二煎目からは思い思いのスタイルで台湾茶の味や香りの変化をゆっくりと楽しむ。「台湾のお茶は世界一」と語る洪さんの言葉通り、三煎、四煎と何度お湯を注ぎ足しても台湾茶本来の風味が失われることなく、その度にまた新たな発見が生まれるのだ。これこそが台湾茶にしかない魅力の一つであり、洪さんが最高品質の無農薬茶葉にこだわる理由なのだと実感する。また、台湾産無農薬ドライマンゴーをつけ合わせると、その相性は抜群で、低温乾燥させただけの芳醇な味覚と台湾茶との絶妙なコラボレーションが楽しめる。

蓮月庭がオープンしたのは2019年11月。まさにこれから…というタイミングでコロナ禍に直面した。そんな中、先行きへの不安も抱えながら、茶藝館としての魅力に磨きをかけ、日々進化を目指してきたという。お店で提供するメニューも試行錯誤しながら吟味し、台湾出身のお客様も大満足の各種料理やスイーツは、すべて洪さんの手作りだ。台湾仕込みの本格レシピを求めて訪れるお客様も着実に増え、今やお店の看板メニューにもなっている。ルーロー飯やルーローバン麺といった食事メニューは、ヴィーガンの多い台湾のお客様にも対応できるように、肉類を一切使わず大豆などで肉の味覚と食感を再現したヘルシーで本格的なヴィーガン料理が基本コンセプトだ。
