2022-10-21 政治・国際

英国の中国総領事館デモで参加者殴打される 人民解放軍は元英空軍パイロットを高額勧誘

© Photo Credit: AP / 達志影像 Bob Chan

注目ポイント

英国中部・マンチェスターの中国総領事館前で今週、香港の民主化を求めるデモがあり、参加していた男性が総領事館関係者らに敷地内に引きずり込まれて殴打された事件で、暴行に加わったとされる総領事は20日、英メディアの取材に応じ、「緊急事態だった」として関与を認めた。また、香港出身の被害者が19日、当時の様子を記者会見で詳細に明かした。

英ニュース専門局「スカイニュース」の取材に、中国総領事館の鄭曦原(Zheng Xiyuan)総領事は、デモ参加者の髪の毛を引っ張ったことを認めた上で、「同僚が命を狙われている緊急事態だった。私は状況をコントロールしようとした」と主張。「私の国や指導者を罵倒していた。(髪を引っ張ったことは)私の使命だった。どんな外交官でもそのように行動したと思う」とデモ参加者を非難した。

一方、ロンドンで19日、英国の議員団が用意した記者会見場に現れた香港出身のボブ・チャンさんはマスクを着用していたが、右目の下や鼻にはデモで暴行されて負ったとされる痛々しい傷が残っていた。中国・北京で開幕した第20回中国共産党大会に合わせてマンチェスターの中国総領事館前では16日、香港の民主化を求める抗議デモが行われ、チャンさんも参加していたのだ

デモ当時、総領事館から数人の男たちが出てきて、参加者の持っていたプラカードなどを奪い取ろうとし、もみ合いが起きたという。チャンさんは、「気が付けば領事館の敷地内に引きずり込まれ、領事館のゲートに押し付けられて、殴る蹴るの暴行を受けた。殺されるかと思った」と語った。

「数人の男たちに暴行され、仲間たちは私を助けようとしたが、ダメだった」と付け加えた。総領事館から出てきた男たちは少なくとも8人で、そのうち数人はヘルメットと防弾チョッキを着用していたとされる。チャンさんによると、マンチェスター警察の制服警官が現れ、総領事館関係者による一連の暴力行為が止んだという。

チャンさんは、「はっきりさせたいのは、私が領事館に不法に侵入したのではなく、引きずりこまれたこと」と強調した。中国総領事館側は、抗議者たちが習近平国家主席の侮辱的な肖像画を掲げたと主張している。

英保守党の対中強硬派として知られるイアン・ダンカン・スミス議員は、暴行に関与した外交官は追放されるべきだと主張。英政府の対応は「全く不十分」だと非難した。英政府は「極めて懸念される」事案だとし、英外務省は何が起きたのか、早急に解明したい考えを表明していた。マンチェスター警察は捜査を開始したとしている。

そんな中、両国をめぐっては中国軍が訓練技術と専門知識を求め、元英国空軍パイロットを高額報酬で勧誘していたという衝撃の事実も判明した。

英国防省報道官は18日、声明で「中国人民解放軍の要員を訓練するため、中国による元英空軍パイロットの勧誘計画を阻止する断固たる措置を講じる」と発表した。

この問題をめぐり、英BBCは約30人の元英空軍パイロットが中国人民解放軍の要員を訓練しているとみられ、その募集人数は増加し、元パイロットは多額の給料を提供されていると報じた。

「全ての現役および元空軍パイロットは、すでに公務秘密法の対象となっている。国防全体で機密保持契約の適用を検討しているが、新たな国家安全保障法案はこれらの問題を含む安全保障の課題に取り組むため、追加ツールを導入する」と英国防省報道官は述べた。

英国の法律上、元空軍パイロットの勧誘などは違法ではないが、英当局者は、中国の狙いが西側のパイロットを通して戦術や作戦を知ることだと指摘。台湾有事の際などに利用される可能性などを含め、この慣行が諜報活動につながるとの深刻な懸念を示した。

米国防総合大学の上級軍事フェロー、デイブ・デ・ロッシュ准教授は、「中国が元英空軍パイロットを〝教官〟として採用すること自体、西側にとって脅威になるが、それだけではなく、西側の強みや弱みを判断する諜報資産としても利用できる」と米CNBCに語った。

ある西側当局者から得たBBCの情報によると、元英空軍パイロットには1人年間27万ドル(約4000万円)もの報酬が支払われているいう。オーストラリア空軍の元パイロットの1人は匿名を条件にCNBCに対し、中国軍で働くために年間100万ドル(約1億5000万円)近くの報酬オファーがあったと明かした。

中国と西側諸国との間の緊張が急激に高まる中、英情報機関「政府通信本部(GCHQ)」のジェレミー・フレミング長官は先週、中国の技術が英国の安全保障と繁栄に大きな脅威を与えていると指摘。また、米国のバイデン大統領は、米国の国家安全保障戦略の一環として、中国を米国の「最も重大な地政学的課題」と呼んだ。

その国家安全保障戦略の中で、中国を「世界秩序を再構築する意図と同時に、その目的を遂行するための経済、外交、軍事、技術力を備えた唯一の競争相手」と位置付けている。


 

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