2022-10-20 政治・国際

プーチン氏の30万人部分動員令から1か月 無差別徴兵を逃れ、海外脱出する若者急増

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

ウクライナに侵攻したロシアで「部分動員」という名の無差別徴兵が始まって21日で1か月。モスクワでは警察や軍関係者が手あたり次第、街で見かけた男たちを強制的に連行し、入隊を強要している。そんな状況から逃れるため、国外脱出する若者が後を絶たない。一方、ウクライナでは約70%の国民が「侵略者に勝つまで戦い続ける」と答え、士気の高さを示した。

ロシアのプーチン大統領は19日、一方的な併合に踏み切ったウクライナ東部と南部の4つの州を対象に戒厳令を出した。戒厳令を口実にして、占領地の住民の基本的人権を奪う意図があるとみられる。米国のバイデン大統領は同日、戒厳令の狙いについて「プーチン氏は信じられないほど困難な状況に置かれている。ウクライナの人々を残忍に扱い、脅して屈服させようとすることだけが、彼がとれる唯一の手段だ」と批判した。

プーチン氏の〝困難〟は、ロシア国内でも顕著になっている。先月発令した「部分動員」が機能していないようだ。米紙ワシントン・ポストは、切羽詰まったロシア当局が、街中で手あたり次第、男性住民らを強制的に徴兵する様子を証言に基づき以下のように伝えた。

警察官と軍の将校が先週、予告もなくモスクワのオフィス街のビルに立ち入った。彼らの任務はウクライナの戦場に送る男たちを徴兵することだ。そこで彼らは見かけた男たち全員に声をかけ、そのまま身柄を確保した。その中にはリハーサル中だった音楽家や小包を配達中の宅配業者、歩行障害のある泥酔した50代男性もいた。

「なぜ彼が連れてこられたのか分からない」とアレクセイさんは泥酔した男性について同紙に漏らした。複合オフィスで働いていた数十人の男性たちと同じように、アレクセイさんも近くの入隊事務所に連行された。

ロシア全土の町では、入隊対象の年齢の男たちが、当局に見つからないよう隠れているという。

ここ数日、警察や軍の強制徴募担当官らは、路上や地下鉄の駅の外で待ち伏せし、男たちを連行している。アパートのロビーに潜んで男性住民に召喚状を配り、オフィス街やホステルなどでも強制的に男たちを連れ去り、カフェやレストランでは逃げられないように出口をふさぐというのだ。

アレクセイさんは30代の平和主義者で、飼い猫と一緒に暮らしていた。連れ去られるまではバーやカフェ、公園で友達と過ごし、コンサートに行ったり、欧州での次の休暇の計画を立てたりして、ごく普通の人生を楽しんでいた。

だが今月11日、役人がアレクセイさんのオフィスに突然押し入ったことで、彼の生活は一変した。2人の警察官と数人の私服の軍関係者が現れ、身分証明書の提示を要求。彼らは黙ってついてくるように命じ、「さもなければ武力を行使する」と脅迫したという。

「パニックになった」とアレクセイさんは明かした。「今まで拘束されたことなんてないし、ロシアで当局者に捕まるということは、大変なことになることぐらい、この国の誰もが知っている」と続けた。

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