注目ポイント
台湾は胡蝶蘭の原産国で、世界的にも有数の蘭の生産国。近年、その生産量は一気に加速しているが、成長の背景には新品種や品種改良の研究を進めていた日本の存在がある。現在は台湾の蘭の生産事業に投資する日本企業や台湾へ進出する生産事業者もあり、低コストで高品質の蘭の安定的生産は、日台の長い友好関係の歴史の上に成り立っていることがわかる。
胡蝶蘭の原産国はどこかと聞かれて、まず最初に台湾を思い浮かべる人は少ないのではないだろうか。台湾は実は胡蝶蘭の原産国であり、世界的にも有数の蘭の生産国でもある。以前の記事で台湾は輸入の花材が多いことをご紹介したが、胡蝶蘭だけに限らず蘭も例外で、市場ではほぼ台湾産、特に台南から出荷されたものが目立つ。今回は台湾の胡蝶蘭と日本の関係についてご紹介する。

台湾の気候と胡蝶蘭
台湾は日本より南に位置する亜熱帯気候の島国である。高温多湿なこの環境は、胡蝶蘭の生産に非常に適しており、海外への輸出も年々増加している。行政院農業委員会によると2021年の蘭の輸出総額は2億元を超えた。蘭の中でも胡蝶蘭は別格であり、蘭の輸出総額のうち7割以上は胡蝶蘭によるものとなっている。台湾の胡蝶蘭の生産は100年以上前から行われているものの、ここ数十年で生産量は一気に加速している。今や日本だけでなく欧州各国への輸出も行っており、世界的な蘭の生産国へと成長した。
台湾の胡蝶蘭が急増した背景
ここまで台湾が胡蝶蘭の生産国として成長した経緯は、ただ単に気候が適しているからだけはない。これには多くの人と文化が起因しており、その中でも日本の影響は大きい。
日本では明治時代から胡蝶蘭の輸入が開始されたといわれている。輸出国は意外にもイギリスである。当初は、胡蝶蘭の苗を輸入しても設備や技術が伴わず、生産を開始しようとした農家はごく僅かであった。胡蝶蘭の栽培はコストも高く、生産も難しい。それにもかかわらず、珍しい胡蝶蘭は当時の上流階級の人々に愛され、需要は徐々に増加していった。
そんな需要過多の中、日本では品種改良の研究も同時に進められていた。だが、テスト品種の中の特定の品種は日本の気候では栽培は難しく、また生産を手助けした農家も少なかった為、新品種の開発は困難を要した。そこで、日本は隣国であり胡蝶蘭の原産国でもある台湾に助けを求めたのだ。台湾は日本から輸入した新品種の胡蝶蘭の生産に着手すると、順調に栽培に成功し、高価で取引される胡蝶蘭は台湾の一大産業となった。

現在の胡蝶蘭の生産状況
胡蝶蘭の生産国として成功した台湾は、その後独自の新品種の開発や品種改良にも力を入れていった。また生産方面では、ワンストップ生産ラインを多くの農家が完成させ、安定した蘭の供給を実現させている。現在では、新品種の大会や展示、販売、生物化学技術や運用方法の発表などを催す世界的な蘭の展覧会「東京蘭展」「世界蘭展」と並び、「台湾国際蘭展」も「世界3大蘭展」の一つとして数えられるほどだ。