注目ポイント
円安で半導体原料が高騰したためTSMCはコストを転嫁するために、当初6%の値上げ 計画だったが、大手顧客に相次いで拒否された。世界的なインフレによりアメリカを はじめとする先進国が「循環金利引き上げ」を発動して打開したが、対照的に日本は 政策の影響で今年から急激に円が下落。日本国内の半導体原材料の価格が急騰し 、TSMCの当初の値上げ計画が、主要顧客から拒否され、今後のコスト転嫁が大きな 課題となっている。
最近の急激な円安で、TSMCのウエハーコストが急上昇していることは想像しづらい
かもしれない。今年7月の「ブルームバーグ」の報道によると、半導体の重要な原料供
給業者である昭和電工が経済不安の影響で、一部の収益不良の製品ラインを廃止し、
関連チップ原料の価格を引き上げた。当時、昭和電工財務長の染宮秀樹氏は、値上げ
を決定した背景には、今年さらに12回の利上げ、サプライチェーンの逼(ひっ)迫、
戦争、エネルギー部門の高騰による円安があると話し、少なくとも2023年までは状況
が緩和されないと考えているとコメントしていた。
その中で、円安は日本企業にとって頭を悩ませる問題となっている。シリコンウエハ
ー、特殊ガス、関連化学物質など、日本の材料不足は輸入と切り離すことができず、
急激な円安は、現地の産業にとって大きな負担となっている。
これまで、日本円は1ドル110円前後を行き来していたが、今年7月には1ドル136円に
なり、今では140円を突破した。日本政府が22日に為替市場に介入した後、一時145.9
から140.5に上昇したが、その後、再び円安を加速させ27日には144.40円と24年ぶり
に最低記録を更新した。
実際、2021年以降、昭和電工が回路製造や洗浄に使用する高純度ガスは、原油価格の
高騰による輸送コストの上昇により、価格が20%上昇しており、当時各大手ウェーハ
工場に相次いで価格調整の噂が出た。昭和電工は日本の半導体業者の一般的な苦境を
表しており、円安が世界の半導体業界に及ぼす影響は予想以上に深いのかもしれない
。
半導体の上流企業の痛切な値上げによりTSMCのコストが上昇し、転嫁困難になった
。市場の噂によると、2023年に6%値上げするというTSMCの当初の計画は、末端市場
の弱さを理由に、主要顧客のアップルやファイザーに拒否されたという。
TSMCの財務報告によると、今年第2季の販売主力は主に高性能計算(HPC)が43%、ス
マートフォンが38%、続いてIoT8%、カーエレクトロニクス5%、消費者用電子機器
3%だ。 TSMCはスマートフォンの売り上げでリードしているわけではないが、それで
も依然として全体の40%近くを占めている。
「経済日報」は半導体産業アナリスト・詹家鴻氏のコメントを引用して、暗い経済情
勢により、大手顧客のアップルが3nm(の半導体)を大量に採用する可能性は低いと
指摘した。もしiPhone 15 ProがAシリーズだけに3nmを採用するなら、TSMCの来年
の売り上げは推定より4ポイント低くなり、全体の成長率は7%にとどまる。しかし、iPhone 15全シリーズで使用すれば、生産能力増強は100%に達し、売上成長率は
11%になる見込みだ。