2022-10-18 政治・国際

露同盟国ベラルーシがウクライナ戦争参戦か 〝援軍〟ならぬ〝お荷物〟になる可能性も

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注目ポイント

過去8か月間、ウクライナ侵攻に直接関与することを避けてきたロシアの同盟国ベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシア軍の兵力不足を補うため、両国の合同部隊を編成することを表明。「ベラルーシ参戦の隠れみのではないか」という観測も浮上する中、米軍事専門家はベラルーシ軍が〝援軍〟というより〝お荷物〟になる可能性が高いと指摘している。

ベラルーシのルカシェンコ大統領はウクライナ侵攻開始以来、ロシアに兵站(たん)支援、補給線の確保、負傷兵の手当、ウクライナ空爆の拠点となる飛行場を提供するなど、間接的には関与してきた。さらには、占領下のウクライナ東部ドンバス地方と南部クリミアに、ベラルーシの戦車と弾薬が輸送されたという報告もある。それでもルカシェンコ氏は派兵を避けてきた。

ところが今月になってルカシェンコ氏は、同国がウクライナ戦争に参戦する可能性を示唆。10日にはウクライナからの攻撃の疑いのある脅威に対抗するためとの理由付けで、ベラルーシとロシアの合同部隊の編成を表明した。

さらに16日、ベラルーシ国防省幹部は、北大西洋条約機構(NATO)などとの対立を背景に、自国との合同部隊に加わるロシア軍の規模が約9000人に上るとツイッターで明らかにした。ロシア軍の第1陣はすでにベラルーシに到着し始め、展開には数日間を要するという。同国防省も同日、航空部隊がロシアから到着し始めたと発表した。

時事通信によると、ウクライナ侵攻で苦戦するロシア軍は人員不足にあえぎ、9月の動員令で予備役30万人を補充しているのが実情。合同部隊の活動場所・目的は謎が多い。大勢のロシア軍に初めてベラルーシ軍を加勢させ、ウクライナ北部に再び攻め込むのではないかという懸念もくすぶっているという。

2月の侵攻前、軍事演習名目でベラルーシに入ったロシア軍は3万人以上に上ったと指摘されており、今回はその3分の1程度となる。

しかし、戦争に直接関与することは、「ルカシェンコ政権にとってもロシアのプーチン大統領にとってもリスクが大きすぎる」と欧州政策分析センター(CEPA)のカティア・ゴールド研究員は中東のニュース専門局アルジャジーラへの寄稿でそう指摘した。

この合同部隊が軍事面で正確に何を意味するのか、そしてどれだけの規模になるのかなど不明な点も多い。だが、ルカシェンコ氏が言及した「迅速な展開」という軍事用語には、通常、軍隊の数を最大限に増やし、諜報活動を強化し、通信および運用システムを設定し、戦闘準備を強化することなどの意味が含まれるとゴールド氏は分析する。

現在、ベラルーシの兵力は約6万5000人で、うち約2万人は支援人員と士官候補生。つまり、正規軍は約4万5000人。しかも、平時には部隊の一部しか稼働していないことを考えると、臨戦態勢には程遠い状態だと同氏は推測する。

プーチン氏がルカシェンコ氏に対し、派兵要請に応じるよう圧力をかけていることは十分あり得るが、「問題はそれが合理的かどうかだ」とゴールド氏は疑問視する。

同氏は、「ルカシェンコ大統領の政治生命は2020年の不正選挙以来、(政権の存続を後押しした)プーチン氏の手に委ねられてきた。以来、ロシアの要求にルカシェンコ氏は抵抗できない。これまで、ロシアとさまざまな共同文書に署名し、ベラルーシの外交政策をロシアの外交政策と一致させることにより、経済と防衛の主導権の大部分をクレムリンに譲り渡した」という。

そんな不均等な2か国間関係だが、戦争経験のないベラルーシ軍がロシアにとってどれほど役に立つかは疑問だとゴールド氏は述べ、兵員が少ないだけでなく、士気も低いとみられ、〝援軍〟というより、むしろ〝お荷物〟になる可能性が高いと指摘。その上、ロシア自体もベラルーシとの国境に沿って新たな前線を展開するために熟練され、装備された兵力を欠いているのが現状だとした。

ウクライナの軍事専門家は、ウクライナ軍はベラルーシから移動する部隊を発見した時点で先制攻撃を行うだろうとし、その標的にはベラルーシの重要なインフラが含まれる可能性を示した。そのような姿勢を恐れ、「ベラルーシ軍はウクライナ国境を超えることはできないのではないか」との見方もある。

そんな中、ルカシェンコ氏はロシアを追い詰めないよう、ウクライナと西側諸国に警告した。ベラルーシ国営通信が伝えた米NBCとのインタビュー内容の抜粋によると、ルカシェンコ氏は、「最も重要なことは、対話の相手がたとえ敵対者であっても窮地に追い込まないことだ。そのため、ロシア側が言うところのレッドライン(越えてはならない一線)を越えてはいけない」と訴えた。

その上で、「ロシアは必要に応じてあらゆる種類の兵器を使用することができる」とし、核兵器使用を示唆し、改めて西側をけん制した。


 


 

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