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5年に1度の中国共産党大会が16日、北京の人民大会堂で開幕した。異例の長期政権となる3期目への続投が確実視されている習近平国家主席(69)は、党中央委員会活動報告で2期目の過去5年を総括。台湾の分離独立派への「重大な闘争を断固として展開した」と述べ、米国を念頭にけん制。香港については、「混乱の包括的統制を達成した」とし、2019年~20年に起きた民主化デモの鎮圧を誇示した。
習主席は〝台湾問題〟について、「中国は武力行使の可能性を排除しない」とこれまで通りの強硬姿勢を繰り返した一方、平和的解決に向け、まい進するとも明言した。中国は民主的に統治された台湾を自国の領土とみなしているが、台湾政府は中国による主権の主張を否定。台湾人だけが自らの将来を決定する権利を持つと断言している。
台中関係をめぐっては8月、米国のナンシー・ペロシ下院議長による訪台に反発した中国が台湾近くで大規模な軍事演習を実施し、一気に緊張が高まった。このような中国人民解放軍による軍事行動は規模を縮小しながら、現在も継続している。
16日の党中央委員会活動報告で習氏はまた、中国は常に台湾の人々を「尊重し、気遣い、恩恵を受けている」と融和の姿勢を示した上で、海峡を越えた経済的および文化的交流の促進に尽力しているとも述べた。
同時に、「台湾問題の解決は中国人民自身の問題であり、中国人民が決めることだ」と主張。「われわれは最大限の誠意と最善の努力で、平和的な再統一を見据えて努力することを誓うが、武力行使を排除し、必要な全ての選択肢を留保することは決してしない」と強調した。
その選択肢は、大多数の台湾人ではなく、外部の力と「非常に少数」の台湾独立派による「干渉」を目的としていると述べて、米国の干渉をけん制した。
「民族統一と国家再統一の歴史の車輪は前進している。祖国の完全な統一を達成しなければならない。それを達成しなければならない」と繰り返すと、人民大会堂では長い間、拍手が響いた。
一方、台湾の蔡英文総統は10月10日の建国記念日の演説で、台湾と中国の間の戦争は「あり得ない選択肢」と述べ、中国政府と対話を行う意思があることを示した。だが、中国は蔡氏が〝分離主義者〟だと位置付け、それを拒否。中国は台湾に対し、香港と同様に「一国二制度」を提案している。台湾での調査によると、主要政党は全てその提案を拒否し、世論の支持もほとんど得られていない。
その香港について習氏は、「香港国家安全維持法」をめぐって2019年に勃発した反政府デモを鎮圧し、「混乱から統治への重大な転換を実現した」と誇示。秩序を取り戻し、状況が「大きく改善」したと述べた。
だが、中国政府による香港への言論弾圧に危機感を抱いた多くの若者や高学歴層が海外に脱出。香港政府が8月に発表した統計によると、19年の750万人をピークに、香港の人口はこの3年で約21万人減少。1997年の英国から中国への返還以来、最大となった。旧宗主国・英国を含む、海外への移住急増が原因とみられる。