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クリミア半島とロシア本土をつなぐ唯一の橋、「クリミア大橋」の爆破について、プーチン露大統領はウクライナによる「テロ行為」と非難。10日、ミサイルによる報復攻撃を行った。ウクライナの首都キーウなどでは複数のミサイルが着弾し、30人以上の死傷者が出た。そんな中、クリミア大橋の爆破工作をめぐり、さまざまな陰謀論が浮上している。
ロイター通信によると、キーウやウクライナ西部の都市リビウなど複数の都市が10日朝、ロシアのミサイル攻撃を受け、建物などが損壊し民間人の死傷者が続出。西部のテルノピルやジトーミル、中部のドニプロやクレメンチュク、南部ザポロジエ、東部ハリコフでも爆発が報告された。ウクライナとの国境に近いロシア・ベルゴロド州では、「国境付近で爆発音が聞こえた」という情報もあると報じた。
同通信はまた、キーウでは中心部にミサイルが撃ち込まれ、主要な交差点で複数の車が炎上。中心部の公園の子ども用の遊び場近くにも大きな穴が開き、埋まったミサイルの破片から煙が立ち上っていたと報じた。警察によると、キーウでは少なくとも5人が死亡し、12人が負傷した。その後さらなるミサイル攻撃があり、通行人が地下鉄の入り口や駐車場に退避した。
プーチン大統領が橋爆破をウクライナの情報機関によるテロ行為だと非難していることから、西側は10日のミサイル攻撃をロシアの報復だと断定した。
そんな中、英BBCのネットニュースは8日、2014年のロシアによるクリミア併合の象徴として18年に完成したクリミア大橋の爆破について、「これまでのところ何がわかっているのか」とする解説記事を掲載。それによると、憶測や諸説が飛び交っているが、信ぴょう性に乏しいものも散見されるとしている。
ロシア当局は「爆発物を積んだトラックが現場で爆発した」としながらも、すぐには主謀者を特定しなかった。その後、プーチン氏がウクライナによるテロ攻撃だと名指しした。
ソーシャルメディアに投稿された監視カメラには、ロシア西部クラスノダール(橋から車で1時間)から来たとされるトラックが、爆発時に西(クリミア方面)へ向かう様子が映っている。ロシア当局は、トラックの所有者はクラスノダール在住のサミール・ユスボフ氏(25)で、運転手は年長の親類マキール・ユスボフ氏だと発表した。だが、映像を詳しく検証すると、このトラックは爆発とは何ら関係ないことがわかる。映像では、上向きに傾斜する橋の路面をトラックが上り始めた時点で、その後ろの片側で巨大な火の玉が発生しているからだ。
ところが、トラック爆弾説はロシア国内で不自然なほど、あっという間に広まった。BBCによると、ロシア当局は「ウクライナ当局が仕掛けた大規模な破壊工作を成功させた可能性」がロシアにとってより深刻な懸念材料となるため、テロ攻撃説の方がまだましだと判断し、ウクライナが関与したトラック爆弾説を拡散したかのようだと伝えた。