2022-10-11 政治・国際

「クリミア大橋爆破でわかっていること」 BBCが露・ウ双方で飛び交う諸説を検証

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

クリミア半島とロシア本土をつなぐ唯一の橋、「クリミア大橋」の爆破について、プーチン露大統領はウクライナによる「テロ行為」と非難。10日、ミサイルによる報復攻撃を行った。ウクライナの首都キーウなどでは複数のミサイルが着弾し、30人以上の死傷者が出た。そんな中、クリミア大橋の爆破工作をめぐり、さまざまな陰謀論が浮上している。

ロイター通信によると、キーウやウクライナ西部の都市リビウなど複数の都市が10日朝、ロシアのミサイル攻撃を受け、建物などが損壊し民間人の死傷者が続出。西部のテルノピルやジトーミル、中部のドニプロやクレメンチュク、南部ザポロジエ、東部ハリコフでも爆発が報告された。ウクライナとの国境に近いロシア・ベルゴロド州では、「国境付近で爆発音が聞こえた」という情報もあると報じた。

同通信はまた、キーウでは中心部にミサイルが撃ち込まれ、主要な交差点で複数の車が炎上。中心部の公園の子ども用の遊び場近くにも大きな穴が開き、埋まったミサイルの破片から煙が立ち上っていたと報じた。警察によると、キーウでは少なくとも5人が死亡し、12人が負傷した。その後さらなるミサイル攻撃があり、通行人が地下鉄の入り口や駐車場に退避した。

プーチン大統領が橋爆破をウクライナの情報機関によるテロ行為だと非難していることから、西側は10日のミサイル攻撃をロシアの報復だと断定した。

そんな中、英BBCのネットニュースは8日、2014年のロシアによるクリミア併合の象徴として18年に完成したクリミア大橋の爆破について、「これまでのところ何がわかっているのか」とする解説記事を掲載。それによると、憶測や諸説が飛び交っているが、信ぴょう性に乏しいものも散見されるとしている。

ロシア当局は「爆発物を積んだトラックが現場で爆発した」としながらも、すぐには主謀者を特定しなかった。その後、プーチン氏がウクライナによるテロ攻撃だと名指しした。

ソーシャルメディアに投稿された監視カメラには、ロシア西部クラスノダール(橋から車で1時間)から来たとされるトラックが、爆発時に西(クリミア方面)へ向かう様子が映っている。ロシア当局は、トラックの所有者はクラスノダール在住のサミール・ユスボフ氏(25)で、運転手は年長の親類マキール・ユスボフ氏だと発表した。だが、映像を詳しく検証すると、このトラックは爆発とは何ら関係ないことがわかる。映像では、上向きに傾斜する橋の路面をトラックが上り始めた時点で、その後ろの片側で巨大な火の玉が発生しているからだ。

ところが、トラック爆弾説はロシア国内で不自然なほど、あっという間に広まった。BBCによると、ロシア当局は「ウクライナ当局が仕掛けた大規模な破壊工作を成功させた可能性」がロシアにとってより深刻な懸念材料となるため、テロ攻撃説の方がまだましだと判断し、ウクライナが関与したトラック爆弾説を拡散したかのようだと伝えた。

ただ、元英陸軍の爆発物専門家は、「大型車両搭載型のIED(簡易爆発装置)を数多く見てきたが、これはそのような物には見えない」と証言した。この専門家はまた、橋の下で大爆発があったとみるほうがより妥当だと説明。何らかの海上用ドローンがひそかに使われた可能性を示した。

現場の様子については一部から、爆発直前に橋脚の横で、小型ボートが航行した後にできる波のようなものが別の監視カメラ映像に映っているとの指摘がある。いったいどのような乗り物だったのだろうか。

BBCによると、先月21日にロシアのソーシャルメディアで、クリミア南西部セヴァストポリにあるロシア海軍基地近くに漂着した正体不明の無人ボートが話題になった。ボートは上部が覆われた大きな黒いカヤックのようで、船首にはセンサーや、白い潜望鏡のような装置も搭載されていた。

ウクライナが工作活動にこうした“兵器”を使っているという話は、これまでもしばしば指摘されていた。「ウクライナ軍が遠隔操作できる、海上監視用と海上攻撃用の船舶を使っているという根拠に基づいた報告がいくつかある」と元英軍専門家は指摘。

ウクライナが掌握する地域から160キロ以上離れたクリミア大橋を、ウクライナ側がこのような攻撃を仕掛けたとしたら、これまでで最も大胆な作戦行動の一つだったことになるとBBCは分析する。

だが、ウクライナ側では、多少のうわさ話はささやかれているものの、ウクライナによる工作説を信じるものは多くない。それどころか、ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は声明で、ロシア側のトラック爆弾説を後押しするかのような発言をしている。

ポドリャク氏は「答えはロシア国内で探すべきだ」とし、爆発はロシア治安当局の内部抗争によるものだとの見方を示した。

「連邦保安庁(FSB)と民間軍事請負会社(ワグネルなど)が片方に、国防省やロシア連邦軍参謀本部がもう片方にいて、お互い対立し合っている。今回のことはその具体例だ」と、ポドリャク氏は述べた。

ウクライナ大橋爆破の真相はまだ見えてこない。



 

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