2022-10-11 ライフ

連載「あの街の“正港台湾料理店”」第2回:アクビ 台湾火鍋 精醸啤酒(東京都渋谷区)

注目ポイント

正港とは「正統な、本場の」などを意味する台湾語。「あの街の“正港台湾料理店”」は、日本で台湾の食文化にこだわる料理人のストーリーと食を追い求める連載です。第2回目は、日本人の早坂歩美さんが、台湾とのご縁をつないで火鍋の味を極めた「アクビ 台湾火鍋 精醸啤酒」をご紹介します。

渋谷駅と代官山駅のほぼ中間に位置し、落ち着いた住宅街の一角にある「アクビ 台湾火鍋 精醸啤酒」は、一口で台湾料理店といっても、日本人の手で育まれた純日本発の台湾料理店である。

「自分の好きなことしか仕事にできない」と語るオーナーの早坂歩美さんが、学生だった19歳の頃から一貫して仕事として関わってきたクラフトビールと大好きな火鍋をコラボさせ、コロナ禍の最中2021年2月にオープンしたお店である。

「アクビ」のロゴが印象的な店内に足を運び入れると、一人で来店しても火鍋を楽しめるようにと設置されたカウンターがまず目に飛び込んでくる。そして奥のスペースにまでバランスよくテーブル席が配置され、さりげなく施された台湾風のデコレーションも、いわゆる台湾料理店とは異なった独自の空間を生み出している。 

店名の由来を尋ねると、「誰かがアクビをすると、その周りの人にもうつって連鎖しますよね。そんな風にこのお店の話題が伝播して、ここに来た人たちの幸せの連鎖が生まれることを願って名付けました」と“なるほど”の答え。素敵な笑顔を絶やさない早坂さんらしいユニークな発想だ。

ご自身のキャリアと火鍋へのこだわりを語るオーナーの早坂歩美さん。北欧クラフトビールを専門に扱うビアパブ「ハブラシ ビア&ポテト」に続く2店目の出店となる。

早坂さんが「アクビ 台湾火鍋 精醸啤酒」を出店するきっかけになったのは、台湾で絶大な人気を誇るクラフトビール「臺虎精釀(TAIHU BREWING)」との出会いであったという。同社は2013年の創業ながら、瞬く間に台湾国内でのポジションを確立し、今では誰もが知る大企業へと成長を遂げている。その若き経営陣たちと意気投合し、親交を深めていった早坂さんは、日本で独占的に取り扱うことのできる公認店としての承認も得ているという。

台湾から直送される「臺虎精釀(TAIHU BREWING)」のクラフトビール。バリエーション豊かな様々な風味が味わえる。

この台湾クラフトビールと台湾火鍋とのコラボを実現させたいと彼らに相談を持ちかけたところ、「オッケー歩美。まずは修行から始めよう!」と何度も台湾を訪れる機会を与えられ、数えきれないほどの名だたる火鍋店を巡り歩いたという。ある時は、一日5店舗の火鍋店を回って食べ比べをし、それを3日間続ける正に「修行」のような日々を過ごしながら、火鍋の本質を追求することができたと語ってくれた。

お店の看板メニューは、何といってもオリジナルレシピで考案された本格台湾火鍋。スパイスやハーブを絶妙にブレンドさせた白湯と麻辣湯の2種類の薬膳スープで構成されており、噂を聞きつけて訪れた台湾出身のお客さまの舌をも満足させているという。そして、お店一番のこだわりは無添加・無化調だ。早坂さんいわくは、どんなに美味しい火鍋でも、過分な味付けや化学調味料の使用は、食べた後に胃がもたれたり、身体がむくんだりしてしまうことのことで、素材そのものの旨味と最低限の塩味だけで“食べ疲れない味”を実現しているのだという。

鶏ガラや手羽先、モミジなどと香味野菜を10時間以上かけて炊き上げる白湯と、鶏・豚のダブルスープに15種類以上の薬膳スパイスを加えた麻辣湯がスープのベース。
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