注目ポイント
白亜紀末期の約6600万年前、直径数キロと推定される小惑星が地球に衝突した。ほぼ全ての恐竜など、動植物の約4分の3を地上から一掃し、地球の反対側でもその地形を変えてしまうほどの衝撃を与えた。米ミシガン大学の研究チームはこのほど、その衝突の衝撃によって生じた巨大津波がどのようなものだったのか、世界で初めてシミュレーションした。
小惑星(チクシュルーブ衝突体)によるメキシコ・ユカタン半島への衝突は、地球規模の大変動を引き起こした。エアロゾル、すす、ほこりが大気中に充満し、衝撃で吹き飛ばされ、真っ赤に燃えた物質の破片が大気圏に再突入し、地上に降り注いで大火災が広がった。
衝突から48時間以内には超巨大津波が地球を一周した。それは、地震によって引き起こされる津波よりも何万倍ものエネルギーを持っていた。
「この津波は、地球の半分で海盆の堆積物をかき乱し、侵食するほど強烈で、堆積記録に隙間ができたり、古い堆積物をかくはんしたりした」と、米ミシガン大学研究チームで今回の論文を共同でまとめたモーリー・レンジ氏は説明した。
研究によると、小惑星の直径はおよそ14キロで、地球に衝突した時にできたチクシュルーブ・クレーターの直径は約100キロにも及んだ。直後に発生した波の壁は、最高で高さ4500メートルにもなった。
米科学誌「アドバンシング・アース・アンド・スペース・サイエンス(Advancing Earth and Space Science)」に4日付で掲載されたミシガン大学の論文によると、白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)に起きたこの小惑星衝突により発生した津波のエネルギーは、2004年にインドネシアで23万人の死者を出した巨大津波より3万倍だったという。
また、2011年に東日本で記録された津波や、1883年のインドネシア・クラカタウ火山噴火の後に襲った津波とは比較にはならない規模だとしている。
研究者らは、シミュレーションを使って6600万年前の津波と被害を及ぼした範囲をより正確に理解するため、調査した世界120か所の海洋堆積物から、津波の経路と力に関する仮説を裏付ける証拠にたどり着いたという。チクシュルーブ衝突体によって引き起こされた津波の地球規模のシミュレーションが科学専門誌に掲載されたのは今回が世界で初めて。
論文の共著者で米パデュー大学のブランドン・ジョンソン氏は、「ハイドロコード」と呼ばれる大規模なコンピュータープログラムを使用して、チクシュルーブ衝突の最初の10分間(クレーターの形成と津波の開始を含む)をシミュレートした。
ユカタン半島の花崗岩の地殻と浅瀬に衝突した瞬間の小惑星の速度は時速4万3200キロと推定。シミュレーションによると、衝突から3分も経たないうちに、岩石や土砂、瓦礫などが、衝突の衝撃で発生した水の壁を押し返したことで、その波の高さは4500メートルに上った。