2022-10-04 政治・国際

タイタニック号に氷山危機を警告した商船 第1次大戦で撃沈された残骸を海底で発見

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像 the Titanic

注目ポイント

今から110年前、処女航海で海の藻屑と消えたタイタニック号。沈没の原因となった氷山との衝突の危機を警告しようとした船舶として知られる英商船メサバの残骸が、このほどアイリッシュ海の海底で発見されたことが先週発売された新刊本で明らかになった。

1912年4月14日午後9時40分、英国の商船メサバは、北大西洋を横断中、氷山に関する警告無線メッセージをタイタニック号に発信した。「メサバ号からタイタニック号と東へ航行中の船舶に告ぐ。北緯42度から北緯41度25分、西経49度から西経50度30分にかけて、強い流氷と多数の大きな氷山、氷原が観察された。天候は良好」

約5分後、メッセージはタイタニック号の無線オペレーターに受信されたが、ブリッジには届けられなかった。その夜、日付が変わる頃、ニューヨークに向けて航行中の〝不沈船〟とされたタイタニック号は氷山に衝突し、あえなく沈没。世界で最も語られた悲劇の海難事故で、乗員乗客1500人以上が犠牲になった。

一方、無線を送ったメサバ号もまた、第1次世界大戦末期の1918年9月1日、英リバプールから米フィラデルフィアに向けて航行中、アイルランドのウェックスフォード州の海岸から北東約34キロのセントジョージ海峡で、敵国ドイツの潜水艦Uボートからの魚雷を受け、沈没。船長を含む20人が死亡した。それまで長期にわたり、メサバ号は商船として運用されていた。

沈没した正確な位置は、1世紀以上にわたり不明だったが、英バンガー大学と同ボーンマス大学の共同調査チームは、マルチビーム音響測探機を使用してアイリッシュ海の海底調査を行い、メサバ号の残骸を発見したことが先月27日に発売されたボーンマス大学の海洋考古学者イネス・マッカートニー博士の著書「深海からのエコー(Echoes from the Deep)」で明らかになった。マルチビーム音響測探機のセンサーとは、扇状の音波で3次元的に海底や湖底をソナーで測深する機材。

これまでにアイリッシュ海の海底にはトロール船、貨物船、潜水艦など273隻の船が沈んでいることが確認されており、メサバ号もそのうちの1隻。共同調査チームは、それぞれの難破船を同測探機でスキャンし、そのデータを英国水路局の難破船データベースやその他の情報源と照らし合わせ、メサバ号を特定したという。

マッカートニー氏は、海洋考古学にとってマルチビーム音響測探技術は費用対効果の高い〝ゲームチェンジャー〟だと指摘。「以前は、年に数か所潜って難破船を視覚的に特定していた。ところが、今では私たちの調査船プリンス・マドッグ号に導入された独自の音響測探システムにより、比較的低コストで沈没船を調査する手段を得た」と述べた。

米CNNによると、同氏と共同調査したバンガー大学の海洋地質学者のマイケル・ロバーツ博士は、数年にわたり同大の海洋再生可能エネルギー部門と協力して、エネルギー生成インフラに対する海洋の影響を研究してきた。その結果、難破船の存在がこの分野における貴重な情報源であることが分かったという。

「難破船が海底に沈んだ時に何が起こるかを知ることは重要な情報につながる」とロバーツ氏は説明。だが、マッカートニー氏と共同調査を始めたことで、これまで謎だったことが初めて、「まるでジグソーパズルのピースのようにきっちりはまり始めた」という。しかも、各沈没船の発見と特定にかかった費用はわずか800ポンド (約14万4700円)~1000ポンド(約15万9500円)だったとしている。

共同調査チームによると、測探の技術は、陸上の考古学者にとっての航空写真と同じくらい、海洋考古学者にとって効果的だという。

「難破船の多くは深海に沈んでいる。そこには明かりがないため、視覚で確認することはほとんどできない」とロバーツ氏。「ダイバーが潜って沈没船の全長を探ったとしても、大き過ぎて私たちがほしい画像は撮れない。堆積物が多すぎて、全てを見ることもできない」とし、そこでマルチビーム音響測探は「肉眼では見ることができない妊娠中の女性のお腹の中を、音波を使って効果的に視覚化するようなもの」と説明した。

この技術は今後、失われた船のストーリーを明らかにする可能性を秘めている。



 

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