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ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナ東部と南部の4州をロシアに編入することの是非を問うため、同州占領地で行った〝住民投票〟の結果、大多数が賛成したと主張して一方的に編入を宣言した。その陰で4州の一つ、東部ドネツク州の要衝リマンを占領していたロシアの部隊5000人以上がウクライナ軍に包囲され、撤退したと露国防省は1日発表した。ウクライナ側の反攻が激化し、ロシア軍が追い詰められていると軍事専門家はみている。
そんな中、ルガンスク州のガイダイ知事は1日、隣接するドネツク州リマンに陣取るロシア軍5000人以上をウクライナ軍が包囲し、補給・退却路をほぼ遮断したと表明した。ロシア国防省は同日、包囲を逃れるためリマンから部隊が撤退したと発表した。
親ロシア派も周辺で劣勢だと認めるなど、占領地の補給拠点としてきたリマンが、ウクライナ軍の反攻により苦戦を強いられてきた。そんな状況下でロシア側が1日まで部隊を撤退させなかったは、30日の「編入」宣言までは、弱みを見せられなかったためだと専門家はみている。
そのロシア軍の苦境を示すようにプーチン氏は30日、ロシアがウクライナとの停戦交渉の用意があると明言し、軍事作戦停止の可能性を示唆している。
そんなロシア軍に対し、リマン奪還はウクライナ軍にとって大きな戦果となり、リマンから東に約60キロにあるルガンスク州のもう一つの要衝リシチャンスク(人口約9万人)を取り戻せる可能性が高まった。インターネットで拡散された動画では、リマン周辺でウクライナ兵が国旗を掲げている姿がうかがえる。
ウクライナ軍はリマンの北西約55キロに位置するハルキウ州の重要拠点イジュームも先月中旬にロシア軍から奪還しており、軍事アナリストらは戦況がウクライナ軍に追い風となっていると指摘。ロシア占領下にあるすべての領土を取り戻すために反攻を進める決意だと説明した。