2022-10-03 政治・国際

プーチン大統領のウクライナ4州「編入宣言」 西側諸国は〝住民投票〟「無効、認めない」

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注目ポイント

ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナ東部と南部の4州をロシアに編入することの是非を問うため、同州占領地で行った〝住民投票〟の結果、大多数が賛成したと主張して一方的に編入を宣言した。その陰で4州の一つ、東部ドネツク州の要衝リマンを占領していたロシアの部隊5000人以上がウクライナ軍に包囲され、撤退したと露国防省は1日発表した。ウクライナ側の反攻が激化し、ロシア軍が追い詰められていると軍事専門家はみている。

プーチン政権を後ろ盾とする親ロシア派の勢力は先週、ウクライナ東部ルガンスク州とドネツク州、南東部ザポリージャ州とヘルソン州の4州の支配地域で〝住民投票〟を実施。「87~99%が編入を支持した」として4州の親ロ派トップがモスクワを訪れ、編入を申請。プーチン氏がこれを受け入れるという〝筋書通り〟の展開となった。4州はウクライナの国土の約15%にあたる。

この〝住民投票〟にウクライナのゼレンスキー大統領は先月27日、ウクライナ情勢を協議する国連安全保障理事会の公開会合にオンライン参加し、住民投票について「他国の領土を盗み、国際法の規範を消し去ろうと試みる最もひどい国連憲章違反だ」と訴えた。

30日のロシア側の「編入」宣言を受け、ゼレンスキー氏は「偽の住民投票」に価値はなく、無効で現実を変えるものではないと批判。欧州理事会はプーチン氏の演説を受け、「我々はこの違法な併合を絶対に認めない」との声明を出した。加えて、先進7か国(G7)外相も共同声明を発表し、ロシアへの追加制裁方針を明らかにした。

ニューヨークの国連本部では、国連安全保障理事会が各国に領土変更を認めないよう呼びかける決議案を賛成多数で採決したが、常任理事国のロシアが拒否権を行使し否決。15理事国のうち10か国が賛成したが、中国とインド、ブラジル、ガボンは棄権した。

ロシアの動きに対抗するため、ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)加盟に向けた迅速な手続きを始めることを発表し、ゼレンスキー氏や政府トップは申請書に署名したことを明らかにし、ロシアへの対抗姿勢を一層強めた。

英BBCによると、モスクワでプーチン氏は「編入」文書の調印に先立ち、国民に向けて37分間の演説を行った。その中で、「ロシア連邦議会は、ロシアに新しい4州ができることを、ロシア連邦に4つの自治体が加わることを承認するはずだと確信している。これは数百万人の人の民意だからだ」と述べた。

プーチン氏は、ソビエト連邦の崩壊以降、西側諸国がロシアを屈服させ、ロシア文化を否定しようとしてきたとする従来の主張を繰り返した。また、西側諸国がロシアを「植民地化」するため、ロシアに「ハイブリッド戦争」を仕掛け、ロシアを解体させようとしているのだとも述べた。

さらに、核兵器の使用について、「米国は世界で唯一、核兵器を2度も使用した国」で、広島と長崎への原爆投下により「前例を作った」とした。プーチン氏はウクライナ侵攻をめぐり、これまで何度も「あらゆる手段を使う用意がある」と核兵器使用を示唆し、「はったりではない」と威嚇している。

そんな中、ルガンスク州のガイダイ知事は1日、隣接するドネツク州リマンに陣取るロシア軍5000人以上をウクライナ軍が包囲し、補給・退却路をほぼ遮断したと表明した。ロシア国防省は同日、包囲を逃れるためリマンから部隊が撤退したと発表した。

親ロシア派も周辺で劣勢だと認めるなど、占領地の補給拠点としてきたリマンが、ウクライナ軍の反攻により苦戦を強いられてきた。そんな状況下でロシア側が1日まで部隊を撤退させなかったは、30日の「編入」宣言までは、弱みを見せられなかったためだと専門家はみている。

そのロシア軍の苦境を示すようにプーチン氏は30日、ロシアがウクライナとの停戦交渉の用意があると明言し、軍事作戦停止の可能性を示唆している。

そんなロシア軍に対し、リマン奪還はウクライナ軍にとって大きな戦果となり、リマンから東に約60キロにあるルガンスク州のもう一つの要衝リシチャンスク(人口約9万人)を取り戻せる可能性が高まった。インターネットで拡散された動画では、リマン周辺でウクライナ兵が国旗を掲げている姿がうかがえる。

ウクライナ軍はリマンの北西約55キロに位置するハルキウ州の重要拠点イジュームも先月中旬にロシア軍から奪還しており、軍事アナリストらは戦況がウクライナ軍に追い風となっていると指摘。ロシア占領下にあるすべての領土を取り戻すために反攻を進める決意だと説明した。



 

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